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2008年07月23日

大型新人2号

 先日の保冷庫(医薬品専用冷蔵庫)につづいて、またもや“大型新人”の登場!! 院内薬局で使っている分包機という機械です。

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 粉薬を1回ずつ袋詰めするという機械。小児科では粉薬の割合が多いので、毎日フル回転です。

 私が小さかった頃は紙で包んでありました。さじで粉薬を1回分ずつ分包紙に入れ、それを織り込んで作っていきます。

 手間がかかって大変な仕事なのですが、分包機が登場してすっかり目にしなくなりました。おそらくそれが上手にできる薬剤師さんは、あまりおられないでしょう(うまくできる人はお歳の方?)。

 当院は1990年の開院当初は院外処方でした。薬剤の名前や使い方を書いた書類(処方せん)を発行し、患者さんが調剤薬局にもっていき、薬剤を作ってもらいます。でも・・院外処方にいろいろな矛盾や問題があることが分かり、数年後、院内調剤に変更しました。

 日本は伝統的に院内調剤が主であり、医者にかかるということは薬をもらうのとほとんど同意語だといっても間違いではありませんでした。しかし近年は院外処方がしだいに多くなってきました。医療機関とは別に調剤薬局が独立して存在するというスタイルです。

 どちらがいいかという議論をするつもりはここではありませんが、“時代の流れ”は「院内処方から院外処方」だといっていいでしょう。その流れに逆行するようなことをしたのですから、「塚田は頭がおかしくなったのではないか?」などと言われたものです。

 厚生省(現在の厚生労働省)が経済的な誘導(院外処方の方が利益が出る)をしている・・それもあまりにえげつなく、モラル・ハザードともいえるような恣意的な政策を行っていることに対して、大きな怒りを覚えたものでした。(今、私は国の厚生行政に信頼を寄せることができないでいますが、思い起こせばこのことがきっかけだったかもしれません。)

 院内調剤を始めるにあたって必要だった設備の一つが分包機でした。けっこう高額! 先に紹介した保冷庫より一桁多いお金がかかっています。それだけ精密であり、大がかりな機械ではあるのですが。

 以来12年間お世話になった分包機でしたが、しだいに不調になることが多くなりました。修理や調整をしながら生きながらえてきましたが、残念ながら寿命に近づいてしまったようです。(業者さんからは耐用年数はもうとっくに過ぎているといわれていますが)

 院内調剤をしっかり支えてくれた分包機の最後になる写真です。

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 見た目にはまだまだ働けそうなのですが。でも突然動かなくなってしまっては、診療に差しつかえてしまいます。ここは涙をのんで世代交代をしてもらうことになりました。不本意かもしれませんが、どうぞご理解を。

 この分包機にまつわる話題を最後に一つ。私が院内処方について真剣に考えた当時はまだ薬についての情報を患者さんに伝えることに消極的でした。何という名前のどんな効能の薬をどのように飲んでいるのかなど、とても大切な情報がないまま、患者さんが使っていました。それはおかしい。ちゃんと伝えなくてはいけない。それができるのが院内処方の良い点だ・・。

 そう考えて分包された粉薬の一袋ずつに薬剤名などを印字するようなシステムを作りました。当時から分包機には印字する機能が付いていましたが、患者さんの名前などを入れるためのもの。それを使って薬剤情報を入れました。

 当時は画期的なアイデアだったようで、メーカーの担当者も珍しがっていました。薬剤の間違えも防ぐことができます。学会などで報告し、好評だったことを覚えています。

 その後“時代の流れ”は薬剤情報は公開し、積極的にお伝えするのが当然のようになりました。その端緒をきたのが、この分包機でした。そう思うと、いっそう感慨深いものがあります。

 12年間、毎日たくさんの分包業務をしてもらい、本当にありがとうございました。

※医薬分業の問題点については、以前いろんなところで指摘しました。医療費の大幅な増加になったのも、国が医薬分業を強引に進めたのが一つの要因になっている可能性があります。もし当院のように院内処方にすれば、医療費は大幅に少なくなるかもしれません。・・そんなことを書いたものがHP内にありますので、よろしければご覧下さい(「院長の著作」のコーナー)。また、インターネット上でも他の方が書いたものがいくつかでてきます。例えば「医薬分業 塚田」と入れて検索してみてください。

投稿者 tsukada : 2008年07月23日 16:18