複雑型熱性けいれんの対処

息子(1歳5ヶ月)が複雑性熱性痙攣(痙攣重積)になり、5日間入院致しました。・・脳波の定期健診で、主治医の先生に少してんかんの波が見受けられる(検査前、子供は大泣きの状態でした)ので、毎日予防薬を服用した方が良いのではないかという診断を受けました。(1回目の痙攣時間が長く、父親も熱性痙攣の病歴(2歳時に1回)があることを考慮、ただし予防薬の服用にあたっては任意で決めてくださいという診断)てんかんの可能性を考えて服用を検討しているのですが、実は子供は飲み薬をうまく飲めず、毎日欠かさず飲ませることが困難な状態です。(薬を飲ませるときにいつも歯を食いしばって、口を開けない、無理やり口をこじ開けて薬を入れると、口をブブブッとさせて吐き出したり、うまく飲めても、胃の中の物と一緒に吐いたりします)てんかんの予防薬は毎日欠かさず飲まないと再度痙攣を起こす原因にもなるということで、うまく薬を飲めない息子のこと(飲ますのに失敗したこと)を考えると、どのようにすべきか悩んでいます。(Yさん)

「てんかんの可能性がある」ということですが、今ひとつ、根拠が分かりません。

熱性けいれんの中では「けいれん重積状態」を起こしたのですから「複雑型」になります。
しかし、初回のけいれん発作が重積であっても、2回目からは通常の数分以内で自然におさまる発作であることが多いので、初回の発作だけからは判断できないという意見があります(私もそう思っています)。
さらに、仮に「複雑型熱性けいれん」であることと、「てんかん」であることは必ずしも関係ないことだと思います。
(無熱性けいれん、知恵遅れ、片側性けいれんなどの時にはてんかんも心配になりますが)

脳波検査は、小児の場合は施行することも、解読して判断することも難しいです。
けいれんを起こしたわけですから、その影響がある程度残っているでしょう。
逆にてんかんだとしても、必ず脳波に異常所見がでるわけではありません。
発達途上である小児の脳には、一見異常と思えるような波形が、正常の子どもにもみられることもあります。
さらに、自然睡眠の状態でとった脳波以外のもの(覚醒時や、薬物での睡眠時)は、脳波の解析そのものに適しない状態です。

父親が熱性けいれんの既往があるということですが、これは本人の熱性けいれんの診断を後押しすることはあっても、てんかんと診断する根拠になることはありません(熱性けいれんの診断は、今回の症状経過から明らかです)。

以上をまとめて考えると、複雑型熱性けいれんではあるけれど、てんかんである可能性を考える必要は、現段階ではないように思います。
また、熱性けいれんの予防のためにダイアップ座薬の発熱時使用は行ったほうが良いかと思いますが、2回目の発作がもしおきたとしても今回と同じ重積になるとはかぎらず、その点を考慮すると、ただちにダイアップを使用せずに、当面は経過をみるだけですませるというのも、一つの選択肢にはあると思います。
ただし、もし2回目の熱性けいれんを起こし、それが再度重積になってしまったら(その可能性も否定できません)その時の親御さんの気持ちのダメージは大きいものがあるでしょうから、ダイアップ不使用を積極的にお勧めするつもりはありません。

なお、連続した投薬が必要であれば、いろいろと工夫しながら内服をさせてみて下さい。
具体的な方法は、主治医の先生や、病院の薬剤師の先生方、あるいは看護婦さんらと相談してみて下さい。

以上の意見は、いただいたメールの中から判断したものです。
全ての経過や検査結果が分かっているわけではありませんし、いただいた情報も親御さんの持っているものだけに限られています。
その結果、正しいものではない可能性もあるので、これからよく主治医の先生とご相談されて、治療方針などを決めて行かれるようにして下さい。

2004.7.16

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塚田こども医院Q&A2004年