大人の2回目のはしか(麻疹)予防接種

今4ヶ月の男の子の母です。私は31歳なのですが子供の時にはしかになっていません。子供の時に予防接種を受けたのですがなるのでしょうか?また予防接種を受けるとしたら時期は子供が受けるのと同じくらいに受けたらいいのですか?よろしくお願いします。(大阪府・Yさん)

大人の方のはしか(麻疹)予防接種をどうすればいいかというご質問ですね。
少し問題を整理しながらお話をします。

はしか(麻疹)という病気は、はしかウイルスによる感染症です(当たり前ですが)。
このウイルスが一つしか存在していなければ、それに対する免疫がきちんとあると、そのウイルスに感染することはありません(つまり、その病気にはかかりません)。
(一般的な風邪が多くのウイルスによっておきてくるので、何回でもかかります。インフルエンザも種類がいくつもあるのと、同じ型でも少しずつ形を変えて流行するので、何回でもかかってしまいます)

「免疫がきちんとある状態」というのは、一定レベル以上の免疫が必要ということです(専門的には「感染を防御するレベル」と言っています)。
それより少ないと、免疫はあるのですが、かかってしまうことになります(この時、症状を軽くすませてくれるかもしれません)。

はしかの場合には、自然の感染によってできる免疫は非常に強く、長期に渡って免疫がきちんと残り、ほぼ一生かかることはないと言われています(はしかの「二度無し現象」と昔呼ばれていて、このことから免疫学は出発しています)。
ワクチンで作られる免疫は、自然感染によるものよりも小さく、当初ははしかにならないレベルであったものが、長い年月で次第に弱くなり、一定のレベルを下回ることもおきてくる場合があります(これを二次的なワクチンの無効と言っています)。
以前ははしかの流行がときどきあったため、そんなときにはしかウイルスと出会うと、体の中でははしかウイルスを殺すために免疫力が急速に高まり、その後は自然感染と同じだけの免疫力を維持することができました(これを「ブースター効果」と言います)。
近年はこういった自然のブースターが期待できないため、一回のワクチン接種だけでは十分な免疫を長い期間に渡って持ち続けることができないようだと指摘されています。

もう一つ、「一次的なワクチンの無効」もあります。
ワクチンの有効率は95%以上とお話ししていますが、逆に言えば数%の方は最初から免疫がついていないという訳です。

これらを解決するには、はしかワクチンを2回接種することが勧められています。
すでに欧米ではそれが標準になりつつあります。
アメリカは州によって法律が違いますが、小学校入学前に2回、あるいは高校時代にもう1回接種を求めているところがほとんどのようです(アメリカは規定の接種を終えていないと、入学許可がおりません)。

日本では、現行の法律でははしかは1回のみですが、先進国の中ではずば抜けて多くのはしか患者を出し、欧米からは「はしかの輸出国」との悪いレッテルを貼られているという事情もあり、いずれは2回法が採用されるでしょう(いつになるかは分かりませんが)。
それまでは、各人が任意接種でカバーしていくことが必要だと思っています。

十分な免疫があれば、追加の接種は必ずしても必要ではありません。
そのために、血液の検査を受け、免疫の程度を調べていただくことになります。
しかし、そのためには医療機関を受診することになります(保険は使えません)。
趣旨の分かっている医師でないと、混乱がおきるかもしれません(抗体検査には何種類もありますし、「感染を防御するレベル」の考え方も一律ではありません)・
ではどうするか・・検査は省略して、2回目の接種を受けていただいています。
もし十分な免疫があれば、2回目は無効です(副作用の心配もありません)。
免疫があるがそれほど高くないときは、ブースター効果が期待でき、その後強い免疫が長い期間続くでしょう。
全く免疫がないようでしたら、2回目のワクチンで相当の免疫ができるものと考えていいと思います。
(1、2回目ともワクチンが無効になる可能性は無いわけではありませんが、その確率は非常にすくないですね)。

以上、長くなりましたが、ご理解いただけたでしょうか。
結論は、大人の方もぜひ2回目のはしか予防接種を受けて下さい、ということです。
受ける時期は、近くではしかが流行していたり、子どもの集団の中で仕事をしているなどの条件があれば早めに受けられるといいでしょう。
そうでなければ、お子さんと一緒に受けると言うことでいいのではないかと思います。
(思い立ったら即行動!もいいかも・・)

2002.2.11

目次のページへ

ホームページのトップへ


塚田こども医院Q&A2002年 2月