授乳中に鎮痛剤を飲んだけれど・・

婦人科で処方されたロキソニンという薬についてお伺いしたいのですが、副鼻腔炎で耳鼻科を受診する前に、産科を受診し、発熱とほっぺたの痛みを訴えたところ、ロキソンニンとセオキシリンカプセル、ビオセローゼを処方され、夕方6時と夜8時と夜10時に服用するようにとの指示がありましたが、夕方6時と夜10時の2回しか服用しませんでした。(授乳中に短時間でそんなに服用したくなかった為)そして翌朝すぐに耳鼻科を受診したのです。(あまりにほっぺが痛くて熱をもっていた為)婦人科でもらった薬なので疑いもせず服用しましたが、ロキソニンはラット実験で乳汁移行が認められた為、授乳するのをやめる事となっているみたいです。しかも、大人でも作用が強い為1日2回までの服用となっています。服用し授乳をしてしまった事による、赤ちゃんへの影響ってどんな事が考えられるんですか?(栃木県・Oさん)

ロキソニンは最近大人でよく使う鎮痛解熱薬です。私も大人の患者さんには使っています。

ロキソニン錠(60mg)の使い方は次のようになっています(いずれも成人のみ)。
・痛み止めとして使うとき:1回60mg(1錠)、1日3回。頓用としては1回60mg(1錠)〜120mg(2錠)
・熱さましとして使うとき:1回60mg(1錠)、適宜増減、1日2回まで、1日最大180mg(3錠まで)

以上はお薬の公式な説明書に書かれている内容です。これによれば、今回熱と痛みがあったので、その両方をおさえるために、1日3錠使用することには問題がないように思います。

ただし、産科から「夕方6時と夜8時と 夜10時に服用」という指示がでていたことについては、その意図が理解できません。2時間おきに3回服用する意味はなんだったんでしょうか? 頓用として使うのでしたら、「熱や痛みが強く、2時間たっても効果が現れないときに追加して使う」といった指示がでているのでしたら、納得できるのですが・・結果として、大川さんが「夕方6時と夜10時の2回」の服用をされたとのことで、自然なお薬の使い方になっていたのではないかと思います。

「1日2回まで」という制限がつけられていることについて、説明をしておきます。現在、熱さましとして使うお薬は、例外なくこの制限がついています。その薬の効果や副作用の現れ方が強いとか、弱いとかに関係なく、そうなっています。以前は「1日3回まで」が多かったのですが、数年前に厚生省(当時)からの強い指導があって変更されました。厚生省の考え方は、「熱さましは症状をとるだけで、病気そのものを良くしているわけではない。時には、症状を隠してしまうので、病気そのものの発見や対処が遅くなることもある」というものです。そのために、全ての熱さましの注意書きが、先の内容に変更されました。

しかし、この時にいろいろな議論がありました。厚生省の言うように「杓子定規」にはいかないことがよくあります。例えば、子どもの発熱では、1日に2回までの使用しかできないとなると、ずいぶん不都合です。厚生省はそんな意見にも配慮して、別な文書では「1日2回を超えても、保険の扱いにしてかまわない」という内容のことを書いています。ですが、製薬会社への指示は「1日2回まで」のままなので、薬の正式な文書にはそう書かれているというわけです。

次に、授乳中の方が服用してよいかどうかの点です。これも公式な文書には、服用してはいけないし、服用した場合には授乳を中止するよう書かれています。その根拠は
1.子どもに使用する薬ではない
2.母乳中に出てくる薬である
の2点です。

そこで問題になるのは1.です。この薬は現在は大人にしか使用が認められていません。子どもへの安全性が「確認されていない」からです。では危険なのかといえば、そう断定されているわけでもありません。使用したことがないので、安全性についてのデータがないのです。同様な薬が小児にはすでに使われていることから考えても、一概に問題とはいえないと思います。また母乳中に出てくる量は少ないと考えられるので、その点でも、授乳中のお母さんが服用して直ちに問題になるとは、考えにくいですね。

もしも問題がおきるとしたら、「熱さまし」としての働きが強くでることでしょう。つまり「低体温」です。しかし、そのためにはお母さんが相当多量な薬を飲まないといけないでしょうから、赤ちゃんよりもお母さんの低体温が先に起きてくることになるでしょうね。ですから、通常の使用で、赤ちゃんへ問題がおきるとは考えにくいのです。

というようなことで、ご理解いただけたでしょうか。(ロキソニンが根治療法ではなく対症療法の薬ですので、症状がなくなれば使用をやめて下さい。その点さえ守れば、心配はいりませんね)

キーワード:授乳中の服薬

2001.5.10

目次のページへ

ホームページのトップへ

塚田こども医院Q&A2001年5月