嘔吐下痢症とケトン体

先日下の娘(1歳半)が「嘔吐下痢症」を患い、その時の検査で「ケトン体だいぷ出ているね。」と医師より言われました。ものの本で読んだところ、「ケトン体が多い子供は自家中毒になりやすい。」とか。そうであるなら、今回の嘔吐や下痢も「自家中毒」と何か関連があるのか、自家中毒になりやすい体質の子供なのか、ケトン体かぜ多いことで他に何か親として日頃から留意していなければならないことはあるのか、などと心配しております。ちなみに、主人も幼い頃自家中毒であったとのこと。(埼玉県・Yさん)

お子さんはもう良くなっていますか?普通に食べることができるようになっていれば、もうオシッコに「ケトン体」がでることはないでしょう。

ケトン体は、体の中に蓄えてある脂肪を急激に分解するときにでてくるものです。普段は、血液中のブドウ糖を分解して、エネルギーとしています。何かのことでブドウ糖が足りなくなると、脂肪を分解し、そこからブドウ糖を作って、それを利用します。お腹が空いてくるときがそうです。脂肪の分解が十分な酸素補給のもとにゆっくりと行われると、とくに障害はおきません(これを利用して健康の維持増進をはかるのがエアロビクス=有酸素運動です)。

しかし、「飢餓状態」などで急激な脂肪分解がおきてしまうと、肝心なブドウ糖ができず、ケトン体や乳酸などの、いわれる「有害物質」が産製されてしまいます。これらが腹痛、嘔吐などをおこす元になります。(準備運動なしで急に走り出すと、「無酸素運動」になり、腹痛、嘔吐、頭痛などをおこしてしまいますね)

嘔吐下痢症は、文字通り吐いたり下痢をする病気ですから、血液中のブドウ糖は食事からは補給されません。血糖が下がってくるので、脂肪の分解が始まりますが、この過程が急激におきるとケトン体ができ、それがさらに嘔吐や腹痛をひどくさせてしまいます。こんなときは、脱水の改善のために行う点滴内容に、ブドウ糖を多めにいれ、時間をかけてゆっくりと点滴注射すると改善してきます。嘔吐がなくなってきたら、少し甘い物(市販のイオン飲料や、薄目の果汁など)も飲ませるといいですね。

ところで自家中毒は、このような脂肪分解がある種の原因でおきてしまうものですが、幼児期に時々見られます。わりと神経質な子に多いなどと言っていますが、そうではないこともしばしばですし、原因が分からないことがほとんどです。でも、嘔吐下痢症(ウイルス性胃腸炎)など、食事からの栄養補給ができない状態が先にあるときは、尿中にケトン体がでていても当然のことであり、自家中毒とよぶ必要はないと思います。

キーワード:嘔吐下痢症、ケトン体

2001.5.3

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塚田こども医院Q&A2001年5月