頑固な便秘

3歳になる女の子がいるのですが1歳頃から便秘症になり、今ではお医者さんから出されたラキソベロンを飲んでいます。1日10滴ぐらい飲んで、でるかでないかというところです。だいたい4〜5日はうんちをしません。だいたい出始める時はおむつにかすがつくていどのうんちを繰り返しています。本人は一生懸命してるのですが・・ そして最後のうんちが出る時は大人のするようなおおきなうんちをします。痛そうです・・ 便秘になり始めたころにとっても大きなうんちをして何回か腸みたいなものが出てきた事がありました。肛門が切れて出血したこともあります。そのせいもあってうんちが怖いのでしょうか? 野菜、牛乳、果物なんでもあたえています。薬も、もうすぐ3年飲み続けてることになります。このままで大丈夫なのでしょうか?このあいだヒル・・症候群とかというのを聞きました。もしかしたらと思うと心配でしょうがないです。 (埼玉県・Yさん)

まず病気のことですが、ご心配なのは「ヒルシュスプルング病」だと思います。これは先天的な病気で、肛門に近い腸管の神経叢(そう)が無いために、本体あるべき腸の動きがないものです。この部分は絶えずしぼんでいて、ウンチを送る働きがありません。自分の意志ではウンチが出にくいので、かなり「頑固な便秘」です。また、そのためにそれより上(口に近いほう)の腸管がウンチがどんどんたまってくるので、異常に膨れ上がり「巨大結腸」(結腸は大腸と同じ意味)になります。お腹は大きく膨らんでいます。神経叢のない部分が長いか短いかで、症状の出方、程度、見つかる月齢・年齢なども
変わってきます。あまりに頑固な便秘を見た場合は、一応これも疑わなければならないと思いますが、
主治医の先生はその事も考えながら診療されていると思います。

この年齢での便秘は、食事内容の問題と、排便習慣の問題の両方がからんできていることが多いです。
単に硬いためにでないのなら、食事内容の改善(十分な食事繊維、バランス、ある程度の脂肪分・・)、食事の取り方の改善(時間、量、食べるスピード)などに気を付けていけば、ある程度は治ってくるかなと思います。(詳しくはHPの中の「ヘルスレター」をご覧下さい。)また、このときには薬として、今使っているような便を柔らかくする薬が効いてくるかと思います。

もう一つは排便の習慣の問題があります。お子さんのように、ウンチのときに「痛い思い」をするとどうしてもウンチを我慢しがちですね。本来ウンチすることは快いことのはずなのですが、不快な気持ちが先にたち、そのためにウンチを我慢する→もっと便秘→出るときにもっと嫌な思いをする→・・という「悪循環」になっていることも十分考えられます。また、朝食後にしっかり一日分のウンチをするのが自然だと思っていますが、同じ一日一回でも、夕方タイプだと、やはり腹痛を伴った排便になりやすいですね(胃の中に食事が入ると、大腸の下の方はウンチを送り出そうと動き始めます。「胃−結腸反
応」といいます)。そのためには、「朝ウンチ」の習慣つけをぜひ心がけて下さい。

浣腸が癖になるかという話をよく聞きますが、これは誤解があります。直腸や大腸の下の方にウンチが降りてくると、腸が膨れた感覚が「便意」として脳に伝わり、ウンチしようという命令を腸に送るのが普通ですね。ところが、いつもそこにウンチがたまっていると、腸がこの感覚を忘れてしまいます。ウンチがいっぱいなのに、「便意」を催さなくなるのです。そのため、上からもっとウンチが降りてきて、上から押し出すような形で肛門から出ていくこともおきてきます(本人も気づかないウチにパンツのなかにウンチをしていることがあります)。つまり、ウンチを出さないでためっぱなしにしておくことが、「悪い癖」なのです。浣腸の目的は、主に直腸にたまっているウンチを出すことですので、頑固な便秘で、いつも出口付近にウンチがたまっている子については、毎日(!)浣腸をしてもらっています。それもできるだけ朝食後にしてもらい、日中は直腸は空っぽでいるようにしておきます。こんなことをしばらく続けると、「便意」が元に戻ってきてくれますし、いずれ浣腸をしなくても「朝ウンチ」の習慣が出来てくるのではないかと考えています。

いろいろなことをお試しになるといいですが、大切なのは、「ウンチすると気持ちいい!」と思えるようにもっていくことです。浣腸は一時的には嫌なことかもしれませんが、できるだけ楽しい雰囲気をつくってあげて下さい。

では、またこれからの成果を教えて下さい。

ご返答ありがとうございました。もやもやがだいぶなくなりました! やはり精神的なこともあると思います。痛いのもそうですが、これから幼稚園に行く時の事を考えうんちもトイレでするようにと結構強く言い聞かせていたのもあると思います。今日5日うんちがでなく本人も苦しがっていたので浣腸をしました。やはり大人がするよりも大きいうんちがでてきました。もちろん出血も・・ こんなうんちじゃしたくないだろうなとおもうほどでかわいそうでしょうがないです。

もうひとつお聞きしてもよろしいでしょうか? ラキセベロンはこれからもずうっと飲み続けてよいものなのでしょうか?毎日でもかまわないのですか? 今のところ飲まないとでないような状態です。これが癖になってしまい学校に言っても飲むようになってしまうのではないかと心配です。そのうち飲まなくてもでるようになることのほうがおおいのでしょうか?

3歳ぐらいでは、トイレでのウンチは、まだ出来ない子が少なくありません。オシッコがトイレで出来ればOK。ウンチはパンツやオムツの中でもかまいませんし、場所も、自分のお気に入りのところ・・廊下のはじっこや部屋の隅でもいいですよ。以前に比べれば、トイレも改善されて「怖いところ」ではなくなっていますが、それでもウンチはなかなか・・ 自分で「さあ出すぞ!」と気合いを込めないと出来ない子っていますね。そんなときには、自分のお好みのスタイル・場所が必要なのかな、って思っています。そのうち、ちゃんとトイレでするようになりますから、急がないでください。

離乳食の始まる前の赤ちゃんにとっては、5日ぐらい出なくても平気ですが、それ以上の子になってくると、けっこう辛いものがありますね。「難産」のすえにやっと出すと、お腹も痛いし、肛門やその近くの大腸は切れて出血するし、大変です。できれば毎日、せめて2〜3日に一回はウンチをさせて下さい。そのためには早めに浣腸を!

先日のメールのなかに、食事は気をつけておられると書いてありました。そうすると、ウンチの量は多いので、やっぱり出すときは大変でしょうね。

ラキソベロンを長く使っていることをご心配ですが、それだけで問題にはならないはずです。問題は、それを長く使わなければいけないことにあります。前回もお話ししたように、排便習慣をきちんと作るためにお薬を使ったり、積極的に浣腸したりします。その結果、良い習慣ができれば、次第にお薬や浣腸はしなくてすむようになるはずです。お薬などから離れられないということは、まだ改善すべき事が、きっと何かあるはずです。生活全般も見直して下さい。

でも、あんまり「教科書どおり」や「杓子定規」にはならないで下さいね。本人も、お母さんも息がつまってしまって、長続きしませんし、ますます落ち込んで、ウンチを巡っての「強迫観念」にかられていきそうですから。まあ、ウンチは心地よく、楽しく・・(子どもにオシッコ、ウンチの話をすると、キャッキャと言ってはしゃぎますよね。そんな楽しい雰囲気でいられるといいですね。)

今後の「糞闘」を期待します!

キーワード:便秘、排便習慣、ヒルシュスプルング病

2001.2.11.

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塚田こども医院Q&A2001年2月