感染性胃腸炎と食中毒

分水町で小中学生が腹痛を訴えて、集団で休みました。食中毒を疑われましたが、原因は、「感染性の胃腸炎とみられる。」とのこと。こんなにも一度に同時に感染するものなんでしょうか。この感染性胃腸炎について教えてください。 (新潟市・Oさん)

今回の「感染性胃腸炎」の件ですが、実は私も正確な情報は得ていません。おそらくウイルス性胃腸炎だと思っています。

冬場には、いろいろな種類のウイルスによる胃腸炎(嘔吐下痢症、吐き下し)が、繰り返し流行します。とくに子どもたちのいる園、学校、家庭などで、集団的に発生することもまれではありません。

一番多いウイルスは、小型球形ウイルスで、今回のものもそうではないかと推測しています。他にも多くのウイルスがありますが、これらが、胃と腸という消化管の中で繁殖して、粘膜を荒らします。胃の粘膜が荒れると、嘔吐や吐き気がでますし、上腹部(みぞおち)の痛みもでます。腸がやられると、下痢になり、下腹部が痛くなります。また、ウイルスによる感染症ですので、熱もでてきます。あるいは、多少かぜと同じような症状のでることもあります。

ウイルスは吐いた物や下痢便の中に大量にいますので、どうしても周囲にいる人に感染します。また、飛沫感染もおこります。潜伏期は1〜3日ぐらい。

小型球形ウイルスは、冬場の生カキなどの貝類の中にいることがあって、それを食べて発症することもあります。(冬にこのウイルスが人間の胃腸の中で繁殖し、それが河川を汚染し、河口近くにいるカキの中で濃縮して蓄えられている状態になっている可能性があります。冬場の生ガキは、実は怖いんです!)

通常は人から人へと伝染するので、「数日中に」、クラスの大半の子や、家庭の中で同じ症状で発症していくことがあります。それが極めて短時間であると、食中毒のように見受けられることがあります。でも、全くの同時というのは考えにくいです。

今回の件では、県・保健所が調査に入っていますので、詳しいことはいずれ明らかになると思いますが、どうも変ですね。いくつかの学校で、ほとんど同時に多数の子どもたちが発症しているというのは、やはり「汚染された食品を介して」いるのではないかと、推測せざるをえません。通常の感染症としての流行では、説明がつきにくいです。

もっとも、とくに小型球形ウイルスによる胃腸炎は、脱水に注意していれば、さほど重症になるものではありません。対症療法でいいので、「食中毒」だとしても、対処しやすいものです。

「ウイルス性胃腸炎」については、HPの中の「ヘルスレター」シリーズ中にも取り上げていますので、ご参考にされて下さい。

キーワード:感染性胃腸炎、小型球形ウイルス

2001.2.3.

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塚田こども医院Q&A2001年2月