インフルエンザの傾向と対策

インフルエンザの今年傾向と対策の最新の情報を教えてください。 (上越市・Kさん)

インフルエンザについてのトピックスは、いくつかあります。

1.ワクチン接種の回数の変更
これまで全年齢で2回でしたら、今年からは13歳以上は1〜2回になりました(12歳以下はこれまで通り)。これは、ある程度の年齢になると、インフルエンザにたいして一定の免疫を持っているので、1回接種するだけで十分な効果がえられることが分かってきたためです。(欧米などでは、以前から成人・老人については1回でした。)

2.老人への接種も引き続き任意
これはトピックスとしては変ですが、期待されていた「変更がなかった」ことです。今行われている国会で、予防接種法の改正案が可決されれば、来年度から(つまり2001年秋以降)、老人の方への予防接種を、半額程度公費で負担することになります。(国会が荒れていますので、どうなるか、定かではありませんが)

3.ワクチンについて
このシーズン用のワクチンは、内容が3種類とも変更されています(A香港型、Aソ連型、B型とも)。これは、これまでと違う株の流行が予測されたためです。例年、この調査は精度がいいので、このシーズンもちゃんと「当たる」と思います。

ワクチンの生産量では、昨シーズンが品不足で御迷惑をおかけしましたが、このシーズンは各メーカーとも倍程度生産しているので、供給には問題がないだろうとの見通しです。(もっとも、国家検定に合格しないと製品として供給されないので、確定的なことはいえませんが。)また、国家検定の方法などが変更され、いままでよりも早めに市販されています。現在、すでに医療機関への納品が始まっているので、すでに接種を始めているところもあるようです。(当院では、当初の計画通り、今月20日から接種を開始いたします。)

4.インフルエンザ治療薬
これも現在のところ、昨シーズンと状況の変化はありません。「アマンタジン」というA型インフルエンザ・ウイルスに効果のある内服薬が近年使われています。昨年、「リレンザ」という、B型にも効果のある吸入薬の販売が許可されましたが、残念ながら保険では使えず、実質上、まだ使用できない状態です。この点の変化は、まだありません。ほかに、やはりA型、B型の両方に効果のある内服薬が開発されていますが、やはり日本での発売・保険収載(保険で使える)の見通しは立っていません。

5.アマンタジンの問題
アマンタジンについては、大変よく効く薬(特効薬)との印象をもっています。おそらくこのシーズンも相当使うことになろうかと思います。ですが、この薬は、薬の効かない「耐性菌」をつくる性質があります。
この耐性菌は、その患者さんにとっては問題にならないのですが、周囲にいる方(主に家族の方)に感染すると、その方はアマンダジンが効きにくいインフルエンザになってしまいます。(病気の経過には変わりありません。また、この耐性菌は増殖力が弱いので、流行していくことはありません。)以前から使われている諸外国のデータでは、大人に対して数日間の使用で約3割の出現率といわれています。

子どもに対しては、これまであまり使用されていなかったため、このようなデータがなかったのですが、昨シーズン、日本で子どもに使用したところ、やはり3割程度の耐性菌が出現したことが報告されました(新潟県内の大学・開業医などのグループの研究)。(日本では、子どもの脳炎・脳症の発生頻度が異常に高いため、諸外国と違って、子どもに対しても積極的にこの薬を使用するようになりました。)

キーワード:インフルエンザ、インフルエンザ・ワクチン

2000.10.15

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塚田こども医院Q&A2000年10月