咳止めと気管支拡張剤

先日、娘が発熱と咳で先生に診ていただき、夏の風邪ということで総合感冒と咳止めを処方していただきました。同じ頃近所の4歳の子供が同じような症状で別の小児科を受診、気管支拡張剤が処方されたそうです。どちらも咳を軽くするお薬だと思いますが、どのような違いがあるのですか? (上越市・Yさん)

「咳止め」の薬というのは、ほとんどは「中枢性鎮咳剤」といって、咳をおこしてしまう中枢=脳の働きを抑える薬です。咳は、気管支や肺の中の痰や異物を外に出そうとする反応です。粘膜が何かに刺激されると、その反射として咳をし、それを追い出そうとします。咳は、「必要だからおきる」という側面もありますが、しかし強すぎると、それがつらいので、和らげることが必要になります。これが「咳止め」の薬の役割です。ちょうど、高い熱のときに、熱さましを使って体を楽にして上げようとすることににています。しかし、むやみに咳を止めてしまうと、外に出て行くべき痰や異物がそのまま残ってしまうので、逆効果のときもあります

「気管支拡張剤」は、そのものズバリ、気管支を広げる薬です。狭くなっている気管支を広げることで、空気の通りをよくします。気管支喘息の発作時の治療では、必ず使う薬です。
喘息の発作のときには、気管支の粘膜がむくんでいたり、気管支の中の筋肉が緊張して気管支を狭くしています。このようなときに「気管支拡張剤」を使って、気管支の中の空気の通り道を元通りに戻すと、楽になります。この他、「気管支炎」の時にもよく使いますが、子どもたちの気管支炎では、喘息と同じように気管支の内側が狭くなっていることが多いため、効果があります。

喘息や気管支炎のときには、咳がひどく出ていることが多いので、治療がうまくいくと咳が止まってきます。結果として、「気管支拡張剤」は咳を止めることができるわけですが、働く道筋はずいぶん違うということがご理解いただけたでしょうか。

私も含めて、気管支拡張剤を「咳止め」と言ってしまうことが多いので、厳密には違う種類の薬です。

同じような病気で、違う種類の薬がでたということですが、それはその時のお子さんの様子が違うからかもしれません。また、風邪から始まってすぐ喘息の発作をおこしやすい子や、やはり痰のつまったような重い咳をしやすい子には、早くから気管支拡張剤を使って、ひどくならないようにすることもあります。また、「咳止め」と「気管支拡張剤」を同時に使ってみることもあります。

お子さんの病気の症状としては、咳というのが一番多いかもしれません。
その咳が何によっておきているか、咳のおき方はどうか、そしてその子の普段の様子はどうかなどを考えながら、いろいろと薬を使っていきますが、なかなか一筋縄ではいかないこともよくあり、医者を悩ませることも少なくありません。

キーワード:咳止め、気管支拡張剤

2000.7.26

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塚田こども医院Q&A2000年7月