インフルエンザ脳症とワクチン

インフルエンザが流行しているようです。上越市の男児がインフルエンザ脳症で亡くなりました。その子はインフルエンザワクチンを接種していたと新聞で読みました。亡くなったお年よりの何人かもインフルエンザワクチンを接種していたそうですが、インフルエンザの種類が違えば、ワクチンをうっても全く効果がないということでしょうか?毎年この心配をしなければいけないかと思うと・・・。解決策はないのでしょうね・・・。 (上越市・IMさん)

インフルエンザ脳炎・脳症は、まだ原因が分かっていませんし、いくつかの病態があるようです。ワクチン接種をすることで、かなり確実に脳症の発症を抑えられると考えていますが、それだけではまだ不十分だということになります。 本格的には今シーズンから、抗インフルエンザ薬(アマンタジン)を使用していますが、これを早期に使用することで、インフルエンザの経過をさらに軽くし、そして脳症の発症もさらに少なくできるのではないか、とも期待しています。ですが、まだ十分には分かっていないので、模索段階です。

インフルエンザ脳症は、どうも諸外国では報告がなく、日本だけの問題のようです。さらに、ここ数年間、急速に問題になってきた(=増えてきた?)のです。その意味で、今、世界中でこの問題に直面している小児科医は、私たち日本人だけだということです。まだほとんど分からない中で、手探りで予防や治療の方法をさがしている、というわけです。このシーズンは、昨年以上にインフルエンザが流行しているので、これ以上、このような悲惨な事例がおきないことを祈っています。

このような例がでると、ワクチンをしてあったのに、という意見が聞かれます。確かにそうなのですが、「ワクチンをしてあっても、それでもインフルエンザは怖い」と考えていただきたいと思っています。もちろん、ワクチンが全く無効、不要だということではありません。ワクチンであらかじめ基本的な免疫をつけ、そこに実際にインフルエンザにかかった際には、適切な治療を行う(抗インフルエンザ薬の使用もその一つ)ことが必要なんだと、実感しているところです。

当院では、インフルエンザ・ワクチン接種が大切だと、積極的にお勧めしてきました。そんな中でこんな事例が起きてしまうと、くじけそうになりますが、でも気をとりなおして、またがんばります。

2000.2.7

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塚田こども医院Q&A2000年2月