BCGの跡

昨年12月に(当時7ヶ月)、BCGを受けました。しかし、BCGの接種跡が少ないのです。はっきりと跡があるのが7個、かろうじて(薄く)あるのが2個です。結核患者が増えているという報道を耳にすることが多く、やはり心配です。先生、接種跡が少なくても大丈夫でしょうか?(広島県・STさん)

BCGの針跡のうち、半分程度が軽いケロイド状に残っていれば、きちんとした免疫はあると考えてかまいません。全く跡のない子や、どこに打ったのかよーく見ないと分からない子は、結核に対する免疫が十分ではないおそれがありますので、半年〜1年後ぐらいに再度ツベルクリン反応をしてみます。これで陽性ならOK、陰性なら再度BCGです。

昭和54年に結核予防法が改正され、乳幼児のツベルクリン反応・BCGは1回になったのですが、それ以前は、「BCGの翌年再度ツベルクリン反応、陰性ならもう一度BCG」を行っていました。「ツ反陽転」と言う言葉も、死語になってしまいました。回数が減ったのは、結核患者が少なくなったからですが、BCGの意義がなくなったわけではありません。ですので、明らかなBCG跡が残っていないようなら、医学的にはやはり再ツ反をお勧めしています。これは保険は使えませんし、法律(結核予防法)による接種ではありませんので、自由診療になります。

ただし、BCGによる免疫は、結核の発症を完全に予防できるだけパワーのあるものか、若干の疑問があります。子どもの場合では、結核性髄膜炎などの重症な結核にならないようにしてくれます。しかし、ごく近くに(親御さんなど)強力な感染源があると、やはりBCGによる免疫だけでは足りず、結核になってしまうおそれはあります。

また、自然感染を受けて免疫が出来ている場合もあり得るわけですが、それが幼弱乳幼児であると、結核を発症し、さらに重症になることもあるわけで、怖いことです。0歳で行う初回のツ反でいきなり陽性であれば、「初回ツ反陽性」として、本当の結核になっていないか、精密検査が必要です。また、結核を発症しないように、抗結核薬を予防的に使用することもあります。

お子さんの場合には、十分BCGによる免疫がついていると思いますので、もちろん小学1年の2回目まで待っていてかまいませんね。

この2回目の解釈がまたやっかいです。すでに5、6年離れているので、ツベルクリン液にたいする反応が弱くなっている可能性があります。つまり、結核にたいする免疫はあるのに、ツ反は陰性になる、BCGは必要ない、といったことが起きている可能性もあります。

そんなことで、今小学1年、中学1年のツ反・BCGは中止してもいいのではないかという議論があります。もちろん、乳幼児のBCGは全く意味が違いますので、こちらのほうをよりきちんとしておくことが前提条件ですが。

結核が今また問題になってきています。その意味で、お子さんのBCGの跡について、関心を持たれたことを、うれしく思います。

1999.12.19

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塚田こども医院Q&A1999年12月