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2012年01月13日

不活化ポリオワクチンが到着

 今月下旬より当院でも不活化ポリオワクチン(IPV)の接種を始めます。昨年のうちに発注をかけていましたが、海外から個人輸入するので、その手続きなどに時間がかかっていました。ちょうど年末年始をはさんだということもあって、ようやく昨日、ワクチンが医院に届きました。

 日本向けに作られていないので、パッケージも説明書もすべて英文。訳すのが大変です。久しぶりに英語の辞書を開きました。

 ワクチンはフランス製なので、もしかしてフランス語?と心配していました。そうだったら完全にお手上げだったので、まだ英語で助かりました。

 添付文書を日本語に訳し、接種の方法なども看護師と打ち合わせをしました。推奨されている接種方法が筋肉内注射なので、その方法など、接種の実施方法の確認をしているところです。

 接種の開始までもうしばらくお待ち下さい。新たにご希望の方は、どうぞご連絡下さい。

 ところで・・今回IPVを始めたのは、経口生ポリオワクチン(OPV)の副作用を心配する親御さんが多くなったからです。頻度は多くはないのですが、ごくまれに本物のポリオになってしまうことがあります。「小児まひ」という名前が付いているとおり、足が動かなくなったりします。

 不活化ポリオワクチンは、生きたウイルスではないために、そのような副作用はありません(注射部位が腫れるなどという副作用はありますが)。であれば生ワクチンをやめて不活化ワクチンに切り替えれば問題は解決です。いわゆる先進国ではそのように変更してきました。

 ところが日本は「ワクチン後進国」。まだ国が認める不活化ワクチンはありません。そのために、生ワクチンも不活化ワクチンも受けていない子どもたちがしだいに増えてきています。実はこの子たちも、ポリオになる危険があるのです。

 経口生ワクチンの接種を受けると1か月ほどは腸管内でワクチンウイルスが繁殖し、口や肛門からでてきて、周囲に拡がっていきます。周りにいる人たちが免疫を持っていれば何も問題はないわけですが、そうではない場合は感染する可能性、そしてポリオにかかってしまう危険性があります。

 ポリオワクチンを受けていないお子さんは、この例になります。もちろん頻度はとても少ないので、まれなことではあるのですが。

 生ワクチンの副反応を心配して、生ワクチンの接種を受けないでいることが、かえって別のリスクを背負う形になっています。この状況は、何とも皮肉なものです。

 国が認める不活化ワクチンがないのであれば、海外で使われているワクチンを使えばいい・・それが個人輸入です。万一の健康被害発生時に公的な補償がないなど、不利な面もありますが、「ポリオにかからせたくない」という思いが強い方は、ぜひご検討下さい。

 なお、日本でも「正規品」の承認や製造に向かって動きがあります。厚労省では今年末までには国内で使えるように手続きを急いでいるということです。遅くても来年早々には日本製で、国が承認した不活化ポリオワクチンが使えるようになりそうです。

 では1年間、接種を受けないでいればいいのかというと、実はそうでもありません。当初作られるのは「4種混合ワクチン」だけ(すでにあるDPT3種混合ワクチンにポリオを加えたもの)だけです。なぜか単品の不活化ポリオワクチンの承認や製造はその後になるのだそうです。

 すでに3種混合ワクチンの接種が進んでいる子どもたちは、当分はまだ生ワクチンのみしかありません。不活化ワクチンを希望する時には、来年になってもまだしばらくは、海外のワクチンに頼るしかありません。

 やっぱり日本のワクチン行政はゴテゴテです。困りましたね。

投稿者 tsukada : 2012年01月13日 12:00