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2005年12月25日

「想定外」の大停電

 先週は大きな寒波が日本を襲いました。当地もその例外ではなく、家の周りにも1メートル近くの積雪があります。TV映像でご覧になっておられるでしょうが、山間部ではすでに屋根の雪下ろしもしています。いったいこれからどうなるのでしょう。

 気象庁は「暖冬」との予測を撤回し、「厳冬」になると訂正をしたとか。今シーズンが大雪だということは火を見るより明らか(雪で寒いのだから、このたとえはヘン?)。誰もがもう分かっていること。何を今になって、という気持ちもしてきます。対極への変更、それも「後出しジャンケン」のように結果が分かってから。それって、本当にプロの仕事?

 先週の木曜日(22日)は、新潟県内で大停電がありました。県庁のある新潟市を中心に、半日以上、中には丸一日もの間、電気が通じませんでした。当院のある上越市は新潟市から150キロほど離れていて、幸い停電の被害はありませんでしたが、でももしかしたら当地でも起きていたかもと思うと、ゾッとします。

 この日は発達した低気圧のために、風速30メートル以上(秒速での表示ですが、これを時速に直すと108キロ以上!)もの強烈な風が、日本海から陸上に向かって吹いていました。それによって高圧送電線どうしが触れあったり、絶縁部分である碍子(がいし)が塩分を含んだ氷で覆われるなどして、ショートしてしまったようです。それも同時多発的に起きてしまい、迂回路の送電もすべてダウン。その復旧作業も、碍子に着いた氷塊を取り除く作業が強風のためなかなかできず、停電時間を長くしてしまったとのことです。

 今回の停電事故は、その規模、時間などからして異例のことでしょう。電力会社も「想定外のこと」だと言っているようです。でも、気象条件が悪ければ、また起こりうること。そして、どこで起きても不思議ではありません。同じ新潟県内の当地は、当日の天候が新潟市周辺よりも多少穏やかだったということなのでしょう、停電にならなかったのはラッキーだっというだけのことです。

 もしかしたら、あの日、首都圏でも大停電が起きていたかもしれません。新潟県には大きな原子力発電所があり、首都圏に大量の電気を送っています。場所はここ上越市より少し北の方、新潟市より柏崎市近辺です。新潟市周辺を襲った悪魔のような気象条件が、もう100キロほど南下していたら、首都の機能が半日以上も麻痺に陥るという事態も、あったかもしれないのです。

 今回のような停電を起こさないような対策は、やはり不十分だったということでしょう。「想定外のこと」などと言って逃げてほしくありません。強風でも電線どうしが接触しないように、より十分な距離をおく、接触してもショートしないように絶縁体で覆うなど、すぐに実施してほしいです。鉄塔との間の絶縁体である碍子が、その表面に氷が着くことで用をなさなくなるのであれば、碍子にヒーターをまくか、ヒーター内蔵の碍子を作ればいい。そのための熱源は自前の電気をお使い下さい。売るほどあるのですから・・

 今回の停電事故への対応で問題になったのは、県庁、新潟市役所など、こういった危機状態の時にこそ重要な働きをするべき場所の非常電源装置が役に立たなかったことです。情けないことです。1年前に中越地震という大災害を経験している自治体でも、こんな程度です。日本中で、本当に危機管理のできる部署がどれくらいあるか、本当に心配になります。

 病院も停電には弱かったです。ニュースには、真っ暗になった待合室で、診療も中止になり、帰ることもできない患者さんの様子が映し出されていました。診療所は、ほとんどのところで休診にしたようです。こういった非常時こそ、何かあれば必ず受け入れてもらえる医療機関の存在が、地域の人々の安全と安心のために絶対に必要です。そういった機能がどれくらい果たせたのか、これからきちんと検討していってほしい課題だと思います。

 当院は今回の停電事故には見舞われませんでした。メールもいただいておりましたが、ご心配いただきありがとうございました。でも、これを「他山の石」として、当院でも危機管理体制をもう一度見直しておきたいと考えています。

 万一の事態の対応として・・非常電源用発電機2機(約50A)、それに直結した電灯が約20か所、コンセント約5か所。これによりある程度の明かりと、診療、会計、薬局、保育室などの一定の機能は維持できるようにしてあります。非常用の飲料水約200リットル。水洗トイレは地下水を非常電源を使ってくみ上げて使用できるように設備されています。院内薬局なので、そうとうの薬の備蓄はあります。

 問題は暖房です。エアコン、全館暖房は停電時には使えないので、灯油を使う形の暖房機が必要です(数台は今でもあるのですが)。これまでは小さい子どもがいるためにやけどの心配があり、使用すべきかどうか悩んでいましたが、このような厳寒時の停電も「想定内」とするためには、やはり数多く用意しておくべきでしょう。ということで、さっそく電気店に手配をしたところです。

 これらの非常用の設備などが使用されないことが一番いいわけですが、でも、万一の事態に備えることは重要なこと。こんご何が起きるか分かりません。どんなことが起きても、それが「想定外のことだった」などという言い訳だけは、したくないと思っています。

投稿者 tsukada : 2005年12月25日 21:04

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