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2012年01月24日

もう1つの理由

 当院では今週から「不活化ポリオワクチン(IPV)」接種を始めました。フランス製の医薬品を個人輸入し、希望する方に任意接種しています。

 直ちに経口生ワクチンが危険だとは考えていませんが、予防接種を受けず、ポリオに対する免疫をもたない「無防備な子どもたち」が増えてくることは憂慮すべきことです。

 しかし接種を受けたくてもその機会がなければ、子どもたちを守ることができません。そんな子どもたちを作らないために、不活化ワクチンを始めました。

 当初は不活化ワクチンについては、あまり積極的に考えていませんでした。当面は生ワクチンを受けていただき、ここ1、2年で国内製の不活化ワクチンが発売されたらそれに切り替え。この時には国の制度にのっとって行うので、料金も無料になり、万一の副作用出現時にも公的な補償が受けられる。・・そんなふうにシナリオを作っていました。

 でも生ワクチンを受けない方がずいぶんと多いようです。さらに、国内メーカーが作っているのは「4種混合ワクチン」(現在の3種混合に不活化ポリオを加えてワクチン)だけで、単独の不活化ワクチンは製造しないのだそうです。

 このまま何もしないでいると、生ワクチンの副作用も心配ですし(接種を受けていない子にも可能性がある)、海外から本物のポリオウイルスが入り込み、流行が始まる危険性が高まってきます。「手をこまねいている」場合ではないと考えるようになってきました。

 当院が不活化ワクチンを始めることになった直接のきっかけは、県知事の発言でした。ご承知のように神奈川県では県知事が主導して、県として不活化ワクチンを輸入し、接種できる体制を作りました。新潟県はどうするのかと県議会で質問され、知事は新潟県独自の輸入は否定しましたが、何らかの支援策を検討すると答弁しました。

 「独自の取り組みの仕方をどうすべきか、検討してまいりたい」。「調達できるところは調達すべきだと思っている。(支援策が)どのレベルでどうなるかは、少し検討がいる」(朝日新聞、昨年12月13日)

 私の知る限り、県内で不活化ポリオワクチン接種をしている医療機関は1か所のみ(新潟市内の小児科医院)。県が支援策を作った時に、実際に接種できる医療機関が近くになければ「絵に描いた餅」になりかねません。知事の思いが実現しないことにもなります。

 そんな新聞記事を読んで、当院でも実施しようと決意した次第です。その後ワクチンを手配するなどの準備をし、ようやく今週から接種を始めたという経過です。

 でも・・県からはその後の話が伝わってきません。きっと検討はしているのでしょうが・・。それとも「検討してみる」と言っただけの、役人答弁だったのでしょうか。

投稿者 tsukada : 2012年01月24日 11:52