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2011年11月22日

開業医は楽な仕事ですか?

 「提案型政策仕分け」なるものが行われています。民主党が政策遂行のために役立てるのだそうですが・・中身がよく分かりません。

 昨年行われた「事業仕分け」では、政府に無駄な支出がないかどうかをチェックするものでした。結果どのような成果があったのかつまびらかにはわかりませんが、スーパーコンピュータの開発予算についての論議の中で発せられた「2番じゃダメなんですか?」という言葉だけが印象に残っています。

 そもそも「仕分け」という言葉に違和感を感じています。様々な事業を一定の色分けをするわけですが、その価値判断が一面的で、刹那的で、底の浅いものになってはいないでしょうか。

 声の大きな人が、マスコミや国民に耳触りの良い言葉で切りつけてくれば、勝負は決まってしまいます。丁寧に、しっかりとした議論をする中で価値を見出そうという人は、一顧だにされないでしょう。

 税金をもらって行っている事業であるかぎり、その事業の中身や結果についてきちんと見極められるべきです。でも、ただその成果を形だけに求めてしまったら、基礎研究や教育など長い年月、地道に取り組んでいかなければいけない分野は、不利な仕分けをされてしまうでしょう。

 今回は政策の見直しを行うための仕分けだそうです。今日は医療が取り上げられました。そこで行われたすべての議論を見聞きしているわけではありませんが、ニュースで断片的に報じられている内容からは、やっぱり底の浅い議論でしかないと、がっかりしました。

 医療費の問題の中で、開業医と勤務医の所得差が問題になりました。開業医は勤務医の1.9倍で、もらいすぎだというのです。もともと比較にならないものを比べていることに、なぜ気づかないのでしょう。

 勤務医は給料ですが、開業医は事業の収益です。診療所が受け取る医療費のすべてが個人の収入ではありません。その中で看護師、事務員などの人件費を払い、薬品を購入し、建物などの減価償却も行います。

 利益として残った金額があっても、それを勤務医の給与と単純に比較できるものでもありません。開業医には有給休暇はなく、働かない限り(診療しない限り)収入はゼロです。何人、何十人の職員を雇っている事業主としての責任は、雇われの身である勤務医とは全く異なります。

 さらに開業医には退職金はありません。比較されている勤務医の給与に退職金は含まれていないので、それだけでもアンフェアです。診療中や出勤途中で事故にあった時、勤務医は労災事故として保障されますが、開業医は雇用者側ですので、労災事故にはなりません。

 そもそも、勤務医は過労死になるくらい働いていて開業医は楽をしている・・そんなふうに思っていませんか? 実際はそうでもないんですよ。

 かつて私のところに取材にきたテレビの方が、「開業医は9時-5時」って言いましたが、そうじゃないんだよと言いました。私は朝は8時前に診察室に入り夕方の診療は6時過ぎまで。加えて会計などの仕事をしていると夜遅くになります。

 勤務医の方が「9時-5時」に近いかも。みんなではないけれど、私が勤務医をしていた頃に、働かなくても給料がもらえる医者もいました。そんな勤務医と一緒に仕事をするのがイヤで、病院勤めを辞めたのですが・・。

 開業医は気楽で儲かるって思われているのでしょうね。だから今日の「仕分け」で開業医を叩くと、マスコミは大喜びして飛びつく。そんなふうに見えてしまうのは、ひがみ根性なのでしょうか。

 開業医は自分で選んだ道です。マスコミが何と言おうと関係ありません。するべきことを一つひとつやっていきます。このまままっすぐ前を向いて歩み続けていくことにしましょう。

投稿者 tsukada : 2011年11月22日 17:06