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2011年02月16日

幻の「長岡ルート新幹線」

 新潟県の来年度予算案が発表されましたが、その中に新幹線建設の地元負担金を計上しないということで、当地では大きなニュースになっています。

 すでに開業している長野新幹線を延長して、富山県を通り石川県金沢市まで行くのが北陸新幹線。2014年度の開業をめざして建設中です。

 この北陸新幹線は新潟県の一部を通過します。県内には上越市と糸魚川市に2つの駅ができるのですが、新潟県知事が問題にしているのは新潟県がただの通過点になってしまうのではないかという危惧があるからです。

 北陸新幹線の目的は、その名前の通り北陸地方のために作られています。石川県や富山県の人たちが東京により早く行くためというのが一番の目的。

 当初は別ルートも検討されていました。上越新幹線の長岡から北陸地方を結ぶ案です。東京までの時間を比べて、最終的に長野新幹線を延長するコースに決まりました。

 実は問題の根底は、この選択を間違えていたということです。長野ルートではなく長岡ルートを選ぶべきだったのです。私はそう思っています。

 なぜなら・・長野ルートでは日本海側を縦断する鉄道交通がなくなるからです。新幹線ができると在来線は廃止されるので、特急などで北陸地方から新潟県を通り東北地方へ行くことはできなくなります。

 新潟県は日本海に沿って長細いのですが、今は北陸線、信越線などを使って行き来できます。ところが北陸新幹線が開業すると、例えば上越市から新潟市に行くのにはいったん北陸新幹線上りで群馬県高崎市まで行き、上越新幹線下りに乗り換えて新潟市に向かうことになります。富山県や石川県から北に向うのも同じです。

 「長岡ルート」であれば現在の在来線と同じ道程です。県内や北陸地方との間の利便性は確保されますし、日本海側を縦断する長距離のルートも残っています。いずれ新潟市から北に向かう新幹線が整備されれば、東海道新幹線と東北新幹線を日本海側で大きく結ぶことができます(北陸新幹線は石川県から先に伸ばすことは決定ずみ)。

 東京までのわずかな時間の違いに惑わされ、大きな見地から新幹線整備計画を作ることができない・・ここにも日本の政治の貧さを感じてしまいます。

 かつてこの「長岡ルート」を描いた政治家がいました。田中角栄です。彼が主導して上越新幹線を作った時にはそんな構想を持っていました。実際に新幹線長岡駅には北陸地方への分岐をするためのホームが作られているということです。「ゼロ番線」と呼ばれ、線路も敷かれず、現在は使われず、そして将来も使われることはなさそうです。

 私は上越市民ですので、北陸新幹線の開業は直接関係があります。東京に行くのはきっと便利がよくなるでしょう(知事が心配することが現実になり、新潟県内での停車が少なければそうは言えませんが)。

 しかし在来線廃止によって隣の市に行くのも不便になり、県都である新潟市へは恐ろしいほど時間、料金ともかかることになるでしょう。どうしてそのことを問題にしないのか、不思議ですし、不可解です。

 知事が地元負担金拒否を公言しましたが、もう一度原点にある問題を見直してほしいと思います。

 個人的には・・北陸新幹線の開業が大幅に遅れても、その間は在来線が生きているので構わないかなとも思っています。在来線のあり方をきちんと決め、従来の交通網がズタズタにならないよう、もう一つの「整備」をするための時間稼ぎになるかもしれません。

 もっとも、頼みの知事にそんな問題意識があるのか、はなはだ疑問です。結局は新幹線の県内停車を多くするための戦術なのだろうな、って思っていますが、どうでしょう。

投稿者 tsukada : 2011年02月16日 22:37