« 発達の節目 | メイン | 今週の感染症情報 »

2010年03月26日

留め具だけの問題?

 先日の首都圏の交通網は大変なことになっていました。数時間にわたって山手線などが不通に。二十数万人が影響を受けました。

 原因は1本のケーブル。駅構内の無線ラン用のアンテナにつながれていたケーブルが垂れ下がり、それが架線のショートを起こして大停電になりました。

 こんなわずかな原因で数時間も都市交通の機能が麻痺してしまうとは。地方にいて、あまり電車には乗らない私ですが、実はこの前日、東京に出張ででかけていました。もしそのときにこんな騒ぎが起きていたら、いったいどうやって対処すればよいか、見当もつきません。

 それにしてもお粗末です。ケーブルを固定していた留め具を間違えていたということです。本来は屋外用のものを使用しなくてはいけないのに、室内用の留め具と使ったため、劣化し、切れてしまったのだと。

 この留め具、私ももっています。パソコン周りのコードをくくっておくプラスチック製の結索具です。電気店などで普通に売っています。1袋(100ほど入っているかな)が200〜300円くらい。1本数円といったところ。

 屋外用のものは劣化しにくい素材だということで、値段は高いでしょうが、それにしても1本何十円もすることはないでしょう。工事のマニュアルでは屋内用が白、屋外用が黒と決められているのだそうです。

 アンテナの設置工事をした業者が、線路の上を横断する部分に、間違って屋内用の留め具を使っていました。そして工事を依頼し、監督すべき立場のJRがその間違いを見逃していたことにもなります。

 わずか数十円の留め具を間違えて使ったために、甚大な規模の交通障害がおきてしまいました。原因を知ったら、影響を受けた方々はなんと感じられたことでしょう。

 工事をした者も、それを監督していた者も、プロフェッショナルとしての資質に欠けるといわざるをえません。決められたことを丁寧にやっていたら、こんなトラブルは起きなかったはず。残念な話です。

 数ヶ月前にもJRは似たような大きなミスをおかしています。新幹線のパンタグラフの部品を交換した際に、留めるべき4本のボルトすべてを付け忘れたままにしたトラブルです。新幹線が高速で走行中にパンタグラフが破損し、電線を切断、そして停電になったというトラブルです。

 この時にも思ったのですが、ボルトを締めないまま作業を終了させてしまったことが理解不能です。きっとほかの人がやってくれるだという気持ちで作業をしていたのでしょうか。ボルトを取り付けたあとは、その箇所に×印を付けることになっているそうですが、その印がつけられていない状態であることを、作業に関わった人たちは認識することすらしていません。

 文字通り「気がゆるんでいる」ということでしょう。関係者の一人一人がプロとしてきちんと仕事をすることがどんなに大切なことか、よく分かります。高度の複雑になっている社会では、一つのミスが、どこでどんな規模でトラブルになるか、予想がつかなくなってきます。

 そして・・そんな社会になっていることを、モノを設計する人も、システムを構築する人たちも細心の注意をはらっておかなくてはいけないのだとも思います。人はミスを犯しうる、間違いはどこかでおきてしまう・・それが重大なトラブルに発展しないよう、先手を打っておく必要があります。

 さて今回の事故から、JRは何を学んだでしょう。ニュースでは、同じケーブルについている留め具が間違えていないか一斉に点検をしたといっています。当然でしょう。

 でももっと大きな問題があることを見逃していませんか? 高圧電流の通る架線の上を、落下する危険のあるケーブル類を裸のままつり下げていることが、根本的な問題だと思うのです。

 こういったケーブルは駅舎内にそって配線し、架線の上を横断させないことが、今後の事故予防にはもっとも重要なことでしょう。かりに架線の上を通す必要があるのなら、切れにくいワイヤなどに沿わせる形で設置するなど、しっかりとして対策をするべきです。

 もしかしたらJR内部ではすでに検討が始まっているのかもしれません。でもニュースではそんなことには触れてはいませんでした。もしも、留め具の点検以上のことをしていないのであれば、今後も同様な事故はおこりうること。ぜひ検討するように、誰か進言をしていただけないでしょうか。

投稿者 tsukada : 2010年03月26日 23:59