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2008年02月12日

連休明け

 春のように暖かかった連休が終わり、今日はまた冬型のお天気に逆戻り。明日は大雪になるとのこと。まだ冬真っ最中だったんですね。

 インフルエンザの流行がまだ続いています。いや、さらに拡大中といったほうがいいかもしれません。

 連休明けの今日のインフルエンザ患者数は55名。新しく診断した患者さんだけの数です。治ったあとに登園(登校)許可証をもらうために再診している子どもたちや、なかなか熱や咳が収まらないで再受診している患者さんもいるので、インフルエンザ患者さんの総数は軽くその倍を超えるでしょう。

 全体の受診者数も今日は平日の2倍ほど。休み明けは多くなりますが、ここ数週間の月曜の1.5倍くらいほどはありました。一日あたりではおそらく今年度の最高になったのではないかと思います。

 小児科外来ではこんな日は時々あります。インフルエンザが流行するととくにそうです。同じペースで、ゆったりと診療をしてあげられればいいのかもしれませんが、とてもそんな余裕はありません。時間との勝負です。

 必然的に患者さん一人あたりの診療時間は短くなります。限られた時間の中で、必要なものは全てやり抜き、密度の濃い診療をすることも、小児科医の務めです。粗末になってはいけませんし、手を抜いてもいけませんが、時間を極限まで短くすることが求められる時もあります。

 4月から保険診療の点数(医療行為別の料金表のようなもの)が改訂されます。その検討をしている最中で、今週中には厚生労働省から原案が提出されるでしょう(だいたいはそのまま決まります)。

 その中で再診の際の料金を診療時間によって決めるという案が出ています。「外来管理加算」という点数(520円)を、5分以上診察した際にだけ認めるようにする、というものです。

 この点数自体は以前からあるものですが、その算定要件に時間制限を設ける、というものです。5分未満は算定できなくなります。今より520円少なくしますよ、というものです。

 患者さんとゆっくり話をし、診療の質を高めようという考え方そのものはそれでかまいません。その方が良いことは分かりきっています。できるのならそうしてあげたい。

 そしてそれをした時には料金の上乗せをします、というのならまだ分かります。違うのです。現在ある料金に変化はなく、増額するのではありません。5分かけなければ減額います!という厳しい内容です。

 今日の外来のように、1分、2分を争って診療せざるをえない時もあります。時間が短いからそこで行っている医療内容が劣っているとでもいうのなら、納得できません。

 ちなみに一人5分の診療時間をかけるとすると1時間あたり12名の診療。1日6時間診療するとしたら1日で72人の患者さんを診る計算です。

 今回の「短時間診療は減点」という発想は、ゆったりとした診療が可能な科から出ているのでしょう。例えば内科とか外科とか。小児科のような小さな科もいっしょに見渡して作られたものではないように思います。

 当院に限らず全国のどの小児科医院も、内科に比べたらきっとより多くの患者さんを診ていると思います。それは一つには小児科専門医がとても少ないからです。小児科医が不足している現状があり、必然的に一人あたりの小児科医が診療する子どもたちの数は多くなっています。

 例えば当市(新潟県上越市)は人口が約21万人。小児人口を15%とすると、子どもたちは3万人ほど。その中で開業している小児科専門医は6名。単純に計算して、小児科医一人あたり5,000人の子どもたちの「かかりつけ医」をしていることになります。

 毎日の診療に余裕をもちたくてももてず、一方で今日のような「緊急事態」の日にあっても、受診される患者さんをお断りすることなく最後まで診療する・・そんなギリギリの体制でなんとか頑張っている小児科医に対して、今回の「時間制限」案はあまりに過酷すぎるものがあります。

 もし厚生労働省がおすすめするようにたっぷり時間をかけて診療することが正しいのだとしたら、それを上回る患者さんは断っていいとでも? それを他でも診療できるよう、小児科医を増やしてくれるとでも?

 お役人の考えそうな机上の空論に愕然とし、怒りを通り越して、力が抜けてしまっている状態です。4月からこの案の通りに診療報酬が改訂されるとしたら、ほとんどの小児科医院は大幅な減収になるでしょう。

 小児科医の不足が社会問題になり、小児医療の充実を図らなければいけないとされている中で、それに真っ向から反することをしようとしていることに、まさかまだ気づいてはいないというのでしょうか。

 そうはいっても、明日はまたインフルエンザをはじめ、多くの患者さんが来られることでしょう。きっと「時間をかけないこと」をモットーに診療せざるをえません。それが厚生労働省にとっては「悪い診療」だと決めつけられようとしても、現実には仕方のないことなのです。それが医療の現場です。

 せめて患者さんには分かってもらえると思っています、時間をかけなくても必要で的確な医療が提供できていることを。別に国のためにやっていることではないので、それで十分です。

投稿者 tsukada : 2008年02月12日 23:59