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2008年02月26日

民間だから補助しない?

 今から10年ほど前の話。まだ「病児保育」という言葉にもなじみがなく、実際に新潟県内では実施している施設はありませんでした。

 小児科医として何か子育て支援をしたいと思っていろいろと考えている中で、他の地域では先駆的にされているところもあることを知りました。国による病児保育を行う市町村への補助制度ができていることも知り、ぜひ当院で病児保育を実施したいとの願いを市の方に伝えました。

 市では病児保育についての要項を作成し、県内で初めての実施に向けて動き出しました。しかし、医師会と協議する中で、開業医がこの事業を行うのは好ましくないということになりました。公的な補助金を使う事業なので、公的な医療機関で行うべきだ、というのです。

 当院は手をあげていましたが、あえなく却下。かわりに公的な病院が委託を受けて実施することになりました。大きな挫折でした。

 市としては市内に2か所の病児保育施設を作ろうという方針でしたが、もう1か所は受託する医療機関は見つからず、市の単独事業として実施することになりました。

 その数年後、2か所の施設の利用状況がさほど多くないことを知り、ビックリしました。親御さんの本当の希望はそんなものじゃないはず。利用が少ないのはニーズがないのではなく、利用しにくい要素が施設側にあるからなのではないか。そんなふうに思い、それなら当院独自で病児保育施設を作ろうと一大決心をした次第です。それが2001年の春でした。

 当院に併設したわたぼうし病児保育室の利用状況は年々活発になり、今では年間のべ約2,000人の子どもたちに利用してもらっています。市の2か所よりも多い数です。私たちは病児保育に対する自分たちの考えや、今まで行っている子育て支援に、自信を深めることができました。

 しかし利用が多くなるにしたがい、当初予想していたよりはるかに多くの支出が必要になりました。医院からの補填でまかなっていますが、これ以上の規模にすることには限界も感じています。

 市の方とは折に触れ、病児保育のあり方についてお話をしてきましたが、助成していただけるような状況には至っていません。

 今でも昔と同じ意見を耳にします。あれから十数年たっているのに、まだ同じ議論をしなくてはいけないことに、疲労感を感じます。

 民間が独自に行っている病児保育のほうが多く利用されている・・このことだけでも、民間を補助対象としない方針に妥当性がないことを実証しているように思います。

 それに・・市が委託しておこなっていたはずの一つの病児保育施設は、今では市の直営になっています・・いつのまにか。その経過を聞きたかったのですが、市の担当者からはっきりお聞きすることはできませんでした。

 市の病児保育事業がスタートする時点で、あれだけ「公的医療機関が受託すべき」といっていたのに、どうして?という思いです。

 民間だから補助はしない・・もうそんな呪縛から解き放されてもいい時期にきているのではないでしょうか。むしろ民間が不採算で、公的な正確をもつ大切な事業を一生懸命おこなっているのだから、行政からの補助があっても良いと思うのですが。みなさんはどう考えられますか?

投稿者 tsukada : 2008年02月26日 18:33