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2007年10月02日

ニセ医者

 今日のニュースで「岐阜県でニセ眼科医を逮捕」とあり、目を疑いました。今の日本で、医師免許を持たない者が堂々と診療所を開設し、診療行為をしていたとは(>_<)

 この“眼科医”、大学も医学部とは関係がなく(どこぞの大学の神学科を中退とのこと。しっかり「神」を学んでいれば、その後に「神をに恐れぬ行為」には及ばなかったかも)、少しばかりどこかの眼科診療所に勤めたことがあるだけだとか。

 「医学知識」は独学とのこと。そりゃそうでしょうね、医学部できちんと医学を学んだり、医師国家試験を受けてもいない者に、医療のことを教える者もいないでしょう。少しでも専門的な話をすれば、相手の素性が分かってしまいます。(勤務していた眼科診療所で何をしていたのか、詳しいことは書いてありませんが、まさかここで「医者扱い」されたのでは??)

 医師免許証は偽造。ネットで他人の免許証をゲット(そんなのをネットに公開しておく人がいるのも驚き)し、名前などを書き換えて自作したのだとか。保健所には診療所の開設届けをしなくてはいけませんが、コピーですませたとか。原本の確認は当然のことだと思うのですが、どうなっていたのでしょう。この保健所の担当者がたまたまそれで良しとしてしまったのか。「人を疑ってはいけない」という信条の持ち主だったのかもしれませんね。

 診療所は医者一人でできるので、ひとたび開設してしまえば、内部から疑われることはないかもしれません。でも、患者さんからはどうなのでしょう。やっぱり診療技術は稚拙でしょうし、カルテだってちゃんと書けていないに決まっています(私のカルテもそう??)。

 今回の事件がどうして発覚したのか、詳しくは分かりませんが、やはり外部情報からなのでしょうね。「あの眼科医、やっぱりおかしいよ」などというウワサが広まっていったのかもしれません。

 そんなニセ医者の話は今回だけではありません。ときどきニュースになっているようで、医者の仕事をよっぽど簡単で、甘い汁を吸っているのだと思われているのでしょうね。心得違いもはなはだしいです。

 でも、ニセ医者だというのが分かって逮捕されたけれど、地域の人たちはそれを残念がっている・・私が医学生のころ、実際にあった話です。それは「無医村」でのこと。やっと来てくれた診療所の医者が、実はニセ者だった。確かにカルテは日本語ばかりで専門用語はなく、診療の内容もそれほど高度なことはしていなかったようです。その分、患者さんの話をとても良く聞いてあげていたというのです。

 医者というよりもカウンセラーのような存在だったのかもしれません。ニセ医者だと分かっても、でも自分たちの話をとても良く聞いてくれたし、親身になってくれた、だからいなくなっては困る、というのです。

 医療法に違反していることは別として、確かに地域の人たちにとっては一定の役割を果たしていたんですね。いや、ある面では「医者以上のこと」「医者がなかなかしてくれないこと」をしていたのかもしれません。

 そんな話を聞ききながら、自分は「ニセ医者以上の医者」にちゃんとならないといけないな、などと思った医学生時代でありました。それから30年ほどたち、今医者として仕事をしています。さあ私は「ニセ医者を超える本物の医者」になっているでしょうか。初志を今でも持ち続けているでしょうか。少し反省しなくてはいけないかもしれません。

投稿者 tsukada : 2007年10月02日 23:59