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2007年09月23日

電話相談

 昨夜のお役目は無事終了。「新潟県小児電話相談事業」で、相談にあたっている看護師にアドバイスする仕事です。

 今回は3名の方から相談があり、その全てについて看護師が私に意見を求めてきました。いずれも軽い症状で、とりあえずの対処法をお話ししました。急いでの受診も必要ないという判断です。

 過去に何回かこの仕事をしていますが、傾向はだいたいいつも同じ。件数は冬場になるともう少し多いくらい。新潟県全体をカバーしている事業ですから、この件数をどう見るか。それほど多くはない、と見るのが自然でしょう。

 当院は独自に「電話相談」を行っています。当院をかかりつけにしてもらっている方々へのサービス(無料)。今まで1年半ほどの実績がありますが、1か月100件ほど利用されています。1日では3件くらいになります。

 たった一つの小児科医院が行っている事業と、県全体の事業が1日で同程度の利用という実態・・。せっかく行っているのに、さみしくなります。

 さらに当院の電話相談は診療時間以外の全てをカバーしています。平日は午後6時半から翌日朝8時まで(水曜と土曜は午後12時半から)。日曜や祝日は24時間体制です。この体制を、民間で行っています。どこからも補助はありません。

 新潟県が現在行っている電話相談は土曜、日曜、祝日の午後7時〜10時まで。平日時間外は行っていませんし、日曜などの昼間もありません。深夜、早朝なども未実施。正直に言って、貧弱な体制ではないか、と思ってしまいます。

 利用者がそれほど多くないことをどう考えてるのでしょうか。私には必要性があるのに、それに応じられていない、と写るのですが。でも、お役所の“模範回答”は「利用されないのは、相談の趣旨からいって好ましいこと。必要性もそれほどはない。実施日や時間帯を拡大する必要はない」なのでしょうね。県議会とかから質問があったら、そんな答弁書を書いてきそうです。

 話は飛びますが、当院が病児保育に取り組みだした時にも同じ状況がありました。すでに市内に2か所あった市営の病後児保育施設は、その利用が1日あたりそれぞれ1名前後。その実態を知ったとき、私には衝撃でした。もっとニーズはあるはず。利用したくても利用できない親御さんがたくさんいるはず。なぜなら、私がそういった親御さんのお子さんを毎日診療しているのだから。

 ニーズがあるのに利用されない・・それは取り組み方や受け入れ方法が不十分だから。病気の回復期(病後児)だけを対象にした事業ではなく、急性期の「病児」も対象に(その方が必要性が高いのだから)。「定員」や「人員」などによる制約をできるだけなくし、希望する方は全て受け入れる体制を。そういった努力をすることで、病児保育は大いに利用されるでしょうし、親御さんには喜んでもらえる、社会的な意義も十分に達成できるはず。(わたぼうし病児保育室の6年の歴史を見ていただければ、その考え方が正しかったことを十分に納得していただけると思っています。)

 話を元に戻します。「小児救急電話相談」は親御さんにとっても、医療機関の側にとっても大きなメリットがあります。その役割は今後ますます大きなものになっていくでしょう。ぜひ利用日や時間帯の拡大に取り組んでいってほしいと思います。

 さらに、この事業を県単位で行う意味があるのかどうかも再検討すべきでしょう。厚生労働省の指示で各都道府県が取り組んでいますが、一般的な相談については自治体単位で行う必要はありません。日本のどこか一か所にセンターを作り、そこで全国からの相談を集約して行えば効率的です。24時間、365日実施の体制も作れるでしょう。

 相談員はトレーニングを受けた看護師や栄養士など。小児科医はアドバイス役。センター化すれば、交代で小児科医が勤務する体制が必要ですが、全国で1か所となれば、人員の確保はそれほど難しいことではありません。

 公の事業はスタートするまでにいろいろな部署や団体と意見調整をしてから行いますので、船出するまでが一苦労。そして出航したら、その進路をなかなか変更できないことがよくあります。世の中の情勢が変わってもおかまいなし。実施後の効果を確かめながら進路を調整していくなどということは、とても難しいこと。

 でもいつまでもそうしていたら、せっかくの事業が形骸化してしまいます。仏は作っても魂のない状態。投入される予算=税金も無駄になります。そうならないよう、ぜひ事業の見直しにも取り組んでいただきたいと思います。

 このブログを“偉い人たち”が見ていることもないでしょうね。ここでこんなことを言っても、言いっぱなしになってしまっているのが、少し残念です。

投稿者 tsukada : 2007年09月23日 08:25