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2007年07月28日

暖人ちゃん

 昨日、保育園の送迎車内に長時間取り残され、熱中症で亡くなった暖人ちゃんのことは昨日の「院長ブログ」に書き込みました。ありえないような園や保育士の対応に、怒りを覚えています。

 今日の報道ではさらに信じられないような事実が分かってきました。保育士が暖人ちゃんを見つけ出してから消防署に119番通報するまで20分を要しているというのです(あるテレビでは40分と伝えていました)。

 その間、発見した保育士から園に連絡し、その指示によって(誰が指示したのかは分かりませんが)自動車を日陰に移動させ、車内のクーラーを効かせ、おむつをかえていたそうです。暖人ちゃんの状態は、すでに心肺停止状態になっていたことは十分に考えられます。

 発見の時に呼吸をせず、心拍も停止してたとすれば、顔色は真っ青で、呼びかけに答えることはなく、ぐったりと力の全く入らない状態だったはずです。そんな暖人ちゃんに対して、発見者はさぞ動揺したことでしょう。そんな様子の子どもを見ることなど、おそらくは経験していないはずです。

 疑問なのは、なぜすぐに救急隊を要請しなかったのかという点です。保育士が心肺蘇生をしていたという報道はありません。施していたのかもしれませんが、そうだとすれば一刻の猶予も許さない状態だと判断しているはずであり、119番通報しないということと矛盾する行動です。

 おそらくは心肺蘇生をしてはいないでしょう。ひたすら暖人ちゃんの回復を祈って、顔や手や体をさすっていたのかもしれません。いやそんなこともできず、ただ時間が無為に流れていったのかもしれません。

 発見した保育士がパニック状態になっているとしても、その連絡を受けた園に残っている保育士たちはどう判断していたのでしょう。園長はその時何をしていたのでしょう。とうてい理解できないことばかりです。

 暖人ちゃんがいなくなったことを、当初は園長へも連絡していなかったとのこと。園の責任者ですから、こういった非常時こそ「出番」です。園長の手をわずらわせてはいけないという、保育士のヘンな「優しさ」があったのでしょうか。それとも、形だけの園長であり、こういった時ですら頼りにならないということなのでしょうか。

 担当の保育士だけで(他の保育士への情報伝達も十分にはできていなかったようです)探しだすことができるだろうという、きわめて甘い見通しがあったのかもしれません。元気な暖人ちゃんを見つければ、誰にも(園長にも、そして親御さんにも?)何も報告する必要がなく、その結果、叱責されることもなくてすむ、と自己保身に走ったのかもしれません。

 いずれにせよ、こういった間違った判断が、結果として幼い子どもの命を奪った、あるいは救うことができなかったということを、真摯にとらえる必要があります。危機管理対応が現場の保育士に皆無だった責任は、とても大きなものがあります。

 先ほど見たテレビのニュースでは、院長はお若い男性の方でした。人を見かけで判断してはいけないのでしょうが、園のことについて、きちんと把握し、責任を全うしているようにはとても見えませんでした。問いかける報道の人たちに対して、何も答えず振り切って、走るように逃げて行きました。こんなふうに、普段から自分の責任から逃げていたのかもしれません・・子どもたちの安全を確保するという、重要な任務から。

 組織の長である者は、トラブルが生じたときはその先頭にたって解決に向かうべきですし、事後の解決もしっかり顔を出して、説明責任を果たすべきです。それが全くできない・・やはり、その程度の園長であり、その程度の保育園なのだと、妙に納得してしまいました。

 今回の事故、いや事件については、私も保育施設の責任者として大変重大なことだととらえています。広い意味では、同じ保育の現場に責任を持つ者として、暖人ちゃんに対して申し訳ない気持ちでいます。

 当院では、今朝の全職員によるミーティングでこの問題について私から説明をし、昨日の「院長ブログ」を全員に読んでもらいました。さらに、わたぼうし病児保育室の常勤保育士には、この件についての緊急の職員会議を開催しました。

 保育士を始めすべての職員にとってこの事実はショッキングなことでした。ことの重大性を良く認識してもらえたはずですし、私たちも日常の業務(保育室だけではなく医院の方も)の中で、もしかしたら見落としてしまって子どもたちの命を脅かす危険性が潜んでいるということを、良く分かってもらえたと思います。

 保育室の業務の中では、とくに保育室から医院へ診察に出かける時などにきちんと点呼をとることなど、これまでも行ってはいましたが、それでも特に見落としがないようにするためにどうすればいいか、具体的なマニュアルの作成も含めて真剣に討議を行いました。

 しかし、どこでミスが起きてしまうか分からないのが私たちの仕事です。一つのわずかなミスが、ときに重大な結果をもたらしてしまうことを肝に銘じて、日々の保育や小児医療の業務に専念することを今一度確認しました。今回の出来事についても、「他山の石」として、そこから多くのものを学んでいきたいと思っています。

投稿者 tsukada : 2007年07月28日 20:17