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2007年07月27日

熱中症

 今日は東海地方でも梅雨が明けたとのこと。新潟も気温が上昇、真夏日になりました。

 当地の上越まつりも直江津地区に移り、いよいよ佳境。3日間に渡り、各町内のお神輿を引き回します。港町らしい勇壮なお祭りです。

 この時期は1学期が終わり、夏休みに入ります。そしてそろそろ梅雨も明ける頃なので、暑さはつきもの。私も自分の子どもがまだ小さかった頃は、お神輿の巡行に付いてまわりました。普段はクーラーの効いている所にばかりいるので、炎天下の屋外に体が慣れず、きつかったことを今でも思い出しています。

 子どもたちは楽しいし、気分が乗っていると“限界”を超えてもまだ頑張っちゃいます。油断すると熱中症などの事故や病気にもなりかねません。周りの大人が十分に注意をしていて下さい。

 さきほど、とてもショッキングなニュースがありました。北九州市の保育園で、屋外に駐車中の園の送迎バスの中で一人の園児が熱中症で死亡したというのです。遠足からの帰りにそのままバスの中に取り残され、3時間半後に発見されましたが、救急隊が駆けつけた時にはすでに心肺停止状態。病院に運ばれましたが、直後に死亡が確認されたました。

 今日の北九州市は最高気温が33.4度と、今年一番の暑さ。クーラーを切られ、密閉された車内は猛烈な暑さになっていたことは想像に難くありません。そんな過酷な環境では10分程度で熱中症が発生してしまいます。そして熱中症は容易に死に至るほど、重篤なものです。

 報道では、遠足から園に戻ってきたのは午後1時頃。4時頃、おやつのプリンが一つ残ったことから、園児が一人行方不明であることを認識し、そこから保育士が捜索開始。4時50分頃、このバスを別の駐車場に移動(この時には園児に気づいていない)。5時頃、バスに他の園児の帽子を置き忘れていて、それを取りにいったところ、車内にグッタリとしている園児を発見。そして救急隊の出動を要請したという流れのようです。

 この流れの中でおかしな点がいくつかあります。遠足に出かけて帰って来たときに全園児の点呼をしていなかったこと(暑い中で外出したのですから、健康状態のチェックも必要だったはず)。一人の園児が行方不明になってから、保育士たちはそれなりに努力して探したのでしょうが、バスの中を見ていませんでした(数時間前に遠足に行ってきたわけですから、その前後の失踪ということも容易に考えられるはずですが、どうしてしまったのでしょう。「バスに残っているはずはない」と思いこんでしまったのでしょうか)。

 発見の10分前、保育士がバスに乗り込んで運転しているにも関わらず、やはり園児を発見していません(すでに3時間以上たっているにも関わらず、ここに至ってもまだバスに取り残された可能性があることを、保育士たちが認識していなかった証拠になるでしょう)。そして、最後に見つかったのも、他の園児の帽子を取りにいっての偶然でした(「人」が「物」より軽んじられていたような印象を受けます。今回の事故を象徴しているような出来事かもしれません)。

 数年前のことですが、園舎の中で園児が熱中症で死亡するという事故がありました。子どもたちが鬼ごっこをしていた時、一人の園児が物入れの中に隠れ、そのまま放置されたしまったことから熱中症になったということでした。このときも、保育士はこの子を数時間も「忘れて」しまっていました。

 子どもたちが安心して楽しく過ごせるはずの保育園で、このような事故(事件?)が起きてしまったことをとても残念に思います。保育園の安全管理がどうであったか、保育の基本的な業務のあり方について、大いに問題にされるべきです。また、保育のプロである保育士の資質や仕事の取り組み方にも、きちんと反省すべきところがあります。

 私も実は同じ立場に立っています。「わたぼうし病児保育室」という保育施設の施設長をしていて、その管理に責任を持つ者です。少ない時で数名、多いときには20名以上のお子さんをお預かりします。7名の保育士が担当していますので、普通の保育園よりも一人一人の子どもにかける余裕はありますが、それでも細心の注意が必要です。

 健康ではない子どもたちを預かっているわけですから、お子さんの病状を良く観察しながら、適切な対処が随時求められます。遠足など、園の外に出かける活動はありませんが、それでも園舎の中や医院の施設内で所在が分からなくなることがないとも言えません。先の事例のような園内での熱中症の発生もそうですが、それ以外にも医療器具などによる事故や、診察時には一般の方とも接触する場面もあるため、連れ去られてしまう可能性もゼロではありません。

 園舎の外に出られないように施錠はしていますが、それでも外に飛び出していってしまうかもしれません(錠は子どもの手の届かない高さになっていますが、イスなどに乗れば手が届くかもしれませんし、保育士などが出入りした時に施錠を忘れてしまうことがあるかもしれません)。

 火災や地震などの災害時には園舎の外に避難することになりますが、全園児の安全確保や点呼が的確に行えるかどうかも、緊急時の対応として重要になります。

 病児保育を行っているために、たえずお子さんの体調をチェックする必要があります。定時的に看護師がメディカルチェックをしていますし、昼食やおやつ、小さい子はミルクや水分についても、その量や摂取の様子を保育士が確認しています。それが同時に全園児の点呼にもなっている点を、よりいっそう意識して行うことで、事故の可能性は減るでしょう。

 一方で、お預かりする子どもたちが日々変わるという点は、病児保育を行っている保育施設の最大の特徴かもしれません。あらかじめ登録をお願いしていますが、全てのお子さんについて保育士が知っているという状態にはなりません(現在、登録者は600名以上います)。利用の必要性は突発的に生じますし、前日までの予約がなく当日急に預かる子が大半です。事前の予約がなくても、必要があれば全ての病児を受け入れています。

 そんな状況ですので、お預かりするお子さんについて、基本的な情報をしっかり把握し、保育士の間で共有することはとても重要な業務になります。初めてお会いする子も預かるわけですので、一人一人のお子さんをしっかり見守っておかないといけません。そこに「空き」があると、事故が起きる可能性が高まってしまいます。

 北九州市での事故の詳細については、これからの警察の取り調べで明らかになることでしょう。おそらく園や保育士の刑事責任は免れないと思います。でも、それだけで終わってはいけないのだと思います。

 ぜひはっきりさえていただきたいことは、その原因と、今後の防止策です。子どもたちを預かる施設では、どこでも起こりうる事故だとしてとらえて欲しいのです。そして、同じような事故をけっして繰り返さないことが、今日亡くなったお子さんと、そのご両親に報いることになると思います。

 朝、元気に登園していった暖人(はると)ちゃんは、もう笑顔を見せてくれることはありません。わずか2歳で、命を失いました。ご冥福をお祈りいたします。

投稿者 tsukada : 2007年07月27日 23:59