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2007年07月03日

しょうがない

 参議院選挙が間近にせまっているためか、国会では何かと騒々しくしています。「失われた年金記録」で大騒動していたら、今度は「しょうがない」発言で燃え上がりました。

 久間防衛大臣の発言です。先の大戦で長崎に落とされた原爆を「しょうがない」と言ってしまいました。前後の発言内容に関係なく、ここだけ取り出せば、そりゃ被爆した人たちや長崎などの地元では怒り心頭に発することでしょう(実は発言全体の趣旨こそが問題なのですが)。

 辞めない、辞めさせるの押し問答をしていましたが、今日の午後、本人から「辞任」の申し出があり、形の上ではこれで決着のよう。でも、ほんとうの解決にはなっていないでしょう。辞める理由が「選挙が近いから」などと、正直に言ってしまったのですから。

 あたかも、これが普通の時であれば辞める必要などなく、自分としては不本意であると言わんばかりです。同じ辞任でも、これでは納得できないとする人たちが大半なのではないでしょうか。

 「しょうがない」発言で辞めることになって、本人は「しょうがない」と思っているかもしれませんが、それはただ流れを受け入れるというだけのこと。「右から左に受け流す」ことができると思ったけど、あまりに風当たりが強いので、仕方なく「受け流さなかった」というようなことかもしれません。

 「しょうがない」というフレーズで思い出されるのは、『雨が空から降れば』という曲。小室等が歌っていたフォークソングの名曲です(作詞:別役実、作詞:小室等)。私が中学生くらいだったでしょうか。もう30数年ほど前の歌。数年前に松山千春が『再生』というアルバムの中でカバーで歌っています(私のiPodに入っていて、出勤の自動車の中でも時々聞いています)。

 雨が空から降れば オモイデは地面にしみこむ
 雨がシトシト降れば オモイデはシトシトにじむ

 黒いコーモリ傘をさして街を歩けば
 あの街は雨の中 この街も雨の中
 電信柱もポストも フルサトも雨の中

 しょうがない 雨の日はしょうがない
 公園のベンチでひとり
 おさまなをつれば おさかなもまた 雨の中

 しょうがない 雨の日はしょうがない
 しょうがない 雨の日はしょうがない
 しょうがない 雨の日はしょうがない

 これが「正調=しょうがない」であります。周囲でおきていることにぶつかるのではなく、全部丸ごと受け入れてしまう。そこには、かつての「闘うフォークソング」はなく、どうせ自分が動いても何も変わらない、変えようとすること自体がムダだし、自分はそんなことはしないよ、という「虚無的」なメッセージがあります。それはそれで、時代の流れの中で多くの若者たち(私を含む)に受け入れられた曲でした。

 でも、政治家がこれではいけないでしょう。物事を筋道だって考え、理詰めで解決の道をさぐる態度とは無縁。日常の生活の中では、そういったとらえ方も時には大切ですが、こと政治のことについては、それではいけないでしょう。

 久間・元防衛大臣は「しょうがない」が口癖なのだとか。理知的、理論的な判断力に欠けるという意味では、残念ながら政治家にはもともと向いていなかったのかもしれません。(大臣は辞めたけど、政治家まで辞めるわけではないので、この言い方は問題かも)

 辞任した今夜はどうお過ごしになっているでしょう。自分の発言の何が問題だったか、真摯に考えている、などということはないでしょうね。こんなふうになったのもみんな自分のせい。それも「しょうがない」と、全部受け入れているかもしれません。そんな意味では、たった1日でもう過去の政治家になってしまったようです。

投稿者 tsukada : 2007年07月03日 23:33