« インタビュー | メイン | 開院記念 »

2007年06月07日

もう一つのインタビュー

 昨日のもう一人のインタビューアーは、女子中学生。ここ3日間、職場体験のために当院に来られていましたが、その最終日に「何でも聞いていいよ」と言っておいたのがインタビューになりました。

 「どうして医者になったのですか?」「この仕事の魅力はなんですか?」「楽しいことや嬉しかったことはなんですか?」「苦しかったことや悲しかったことはなんですか?」・・そんな質問が十数個ありました。

 いつもは、ちょっとひねくれた答えをしたり、言葉の遊びをしたりすることも多いのですが、相手が中学生ではやめておいたほうがいいですよね。真っ正面からちゃんと答えました。

 彼女は将来の希望が小児科医なのだそうです。そして、アフリカなどの発展途上国で、医療に恵まれない子どもたちを救いたいのだと、話していました。なかなか感心なことです。

 中学生の段階ではまだ自分が大人になってからやりたい仕事について、はっきりとしていないこともよくあるでしょう。それが普通かもしれません。何となく「こんな仕事がしたいな」「こんなふうな大人になりたいな」「人の役にたつ仕事をしたいな」などという希望が見えてくるだけでも、たいしたものです。

 彼女のように、しっかりとしたイメージがもてるということは、とてもすばらしいこと。将来に対してポジティブに考えられるというのは、ベースに現在の自己イメージがポジティブだから。今の自分を肯定的にみることができるからこそ、未来の自分をきちんと描き出せるのです。

 「どうせ私なんか・・」と、自分のことを否定的にとらえる傾向が強いと、これから先の自分も「どうでもいいや」と思いがち。大人になることに、特別な感慨もなく、希望や期待もそこからは発生しません。

 「こんな仕事をしたい」「こんな大人になりたい」と思えるようになることは、自分をしっかりと持っているから。アイデンティティーを確立しつつあるからです。そして、具体的なイメージが育ってくるのは、思い描くモデルの存在も必要です。

 身近な大人もそうです。あんなふうになりたいな、と信頼を寄せることができる人が必要です。テレビや本の世界でも、あこがれるような人がいるといいですね。素敵な生き方をしている、私もなりたい、と思える人たちも、子どもたちの心の中で目標として根付くものです。

 私たち大人は、子どもたちの良いモデルになれているでしょうか。しっかり輝いているでしょうか。子どもたちにあこがれられる存在でしょうか。

 日本人の子どもたちは、他の国の子どもたちに比べて、自己肯定感が極端に低く、否定感がそうとう強いといわれています。その結果、将来に対して明るく確実な思いをもてないでいます。どうしてそんなふうになってしまっているのでしょう。私たちの子育てや、日本という社会そのものがどこかで間違っているということなのでしょう。

 今日の夕刊には、子どもたちの自殺がまた増えているとあります。自殺は、自分を否定する最悪の行動。何とかしないといけないですよ。

 職場体験におとずれた中学生は、おそらく自分に自信をもつことができているのでしょう。医者になるかどうか、具体的なことは分かりませんし、それ自体は変わっていくのも当然なのですが、でもしっかりとした足取りで、明るい未来に向かって確実に歩んでいけることでしょう。

 3日間、一人で知らない大人の中に居られたというだけでも、彼女の心が大きな根を持ってきちんと育ってきていることが分かります。偉いことです。

 ここでの体験から、また何かを吸収し、心がもっと大きく成長してくれることを願っています。3日間、ご苦労様でした。

投稿者 tsukada : 2007年06月07日 23:57