« 迷走 | メイン | インタビュー »

2007年05月26日

無政府状態

 ここ数日、麻疹を心配し、ワクチン接種に訪れる大学生さんが目立ちます。何人かは、小さい頃から私の小児科に通っていた方。カルテも以前からのものですし、何よりも懐かしい思いでご挨拶させていただきました。

 もう成人をして、すっかり大人になったお顔を拝見すると、嬉しい気持ちになります。子どもたちが大きく成長し、立派になっていく様子を見ることができることは、小児科冥利につきるものです。

 彼ら(彼女ら)に話を聞くと、教育実習中なのだそうです。大学の教育学部の学生さんなんですね。各地の大学で麻疹が流行していることから、実習中に子どもたちに感染させてはいけないという配慮があるようです。(あるいは、学校の方からそんな指導をされているのかもしれません。)

 今日のニュースでは、関西の小学校でも麻疹の発生から学校閉鎖がでたとか。大学から飛び火して、小中学校など、小さな子どもたちの集団に流行が拡大していかないか、心配です。

 市内に上越教育大学があります。ここでは全学生と一部の教職員に対して麻疹の抗体検査を実施することを決めました。大学の予算で実施し、免疫のない人にはワクチン接種もする方針だそうです。国が動こうとしないので、独自の対応をするようになりました。

 もっともワクチンの確保ができるかどうか、見通しがたっていないということでした。さらに、昨日の「院長ブログ」にも書いたように、試薬不足から検査ができない状態に陥ってしまいましたので、大学の計画が頓挫してしまう心配もあります。

 こうなったら、麻疹の検査を省略し、さらに麻疹単独ワクチンが入手できなければ麻疹・風疹混合ワクチンを使用して、全学生や若い教職員の方に予防接種を一斉に、そして今すぐに行うことが、現実的だと思います。きっと大学の関係者もその方向で考えていることでしょう。

 このHPに設置している「ゲスト・ブック」にも、麻疹をめぐる不安の声が掲載されています。その中に、東京のある区では、小学生にも無料で予防接種を実施するのだとか。自治体によっては、そこまで進んだ対策をとるところも出てきました。

 ここで取り上げたように、大学や自治体が独自に対策を取り始めています。今後、大きな広がりになることを期待したいのですが、それでもやはり限界があります。やはりここは国の出番です。日本全体の問題としてとらえて、きちんとした対応をしない限り、麻疹の根絶は不可能です。

 しかし、政府は有効な対策をとろうとしません。国民に、自分のことは自分で守れと言わんばかりです。こんな状況は「無政府状態」と言われてもしかたないのでは。少なくとも、まっとうに機能してはいません。

 国が、重大な感染症の流行におびえている国民を置き去りにしているのは、無責任の極みです。それとも、麻疹から自分や自分の家族を守るのも、国民の「自己責任」なのだとでも言うのでしょうか。霞が関に飛んでいって、責任ある人たちにぜひ話をしたい気持ちです。

 まさか、麻疹だらけの日本を見捨てて、安全な海外に逃げてしまった、などということはないでしょうね(-_-)

投稿者 tsukada : 2007年05月26日 23:59