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2007年05月25日

迷走

 またもや迷走が始まりました。麻疹の流行に対して、きちんとした手だてがなされていません。

 麻疹が全国で流行している中で、厚生労働省は「ワクチンが足りないから、流行していない地域の人は受けないように」とか、「麻疹の抗体検査を受けてから、必要な人だけ(免疫のない人だけ)ワクチンを受けるように」などとアナウンスしています。それって、厚生労働大臣が言うことですか?

 小学生以上の子どもや大人に対する予防接種は、公的な制度にはありません。費用もすべて個人負担。免疫検査も保険は使えないので、やはり自己負担で行ってもらっています。その費用は数千円から1万円前後かかります。それを何千万人の国民に求めることは、現実を無視しています。

 その費用を払えない人が大勢います。一つの家庭で、みんなで検査やワクチンを受ければ数万円の負担になります。受けたくても受けられない人たちがそうとうでるであろうと想像することは、難しいことではないように思うのですが。霞が関にいると、国民の様子が見えなくなるのでしょうか。

 麻疹を根絶するためには、多くの人たちにワクチン接種を受けてもらわなくてはいけません。当然財政出動すべきです。税金を使うことに、何の問題があるのでしょう。予防接種の枠組みや方法も、今すぐ変更する必要があります。それらをせずに、どのようにして麻疹を日本から無くすことができると思っているのでしょうか。

 国がやらないのなら、自分や子どもたちのことは自分たちでお金を出して守るしかない。そう考える国民も少なくありません。その結果、麻疹ワクチンはもう底をついている状態です。もともとメーカーも少なくしか作っていませんでしたから、日本中から注文が入り、パンク状態。

 その事態に対して大臣いわく「流行していない地域ではワクチンを控えるように」。日本で毎年数千人の麻疹患者が出ていて、今回の数年ぶりの大きな流行になってきるわけで、日本の全ての地域でいつ流行が始まってもおかしくない状況です。確実な予防はワクチンしかありません。それなのに、ワクチンを受けるな、とは何事でしょう。

 あるいはワクチン接種を受ける前に抗体検査を受けるようにと「指示」を出しました。日本の医者は従順ですね(私も含めて)。今、日本中で成人のワクチン希望者に対して抗体検査を行っています。その結果・・こんどは検査センターがパンクです。

 麻疹抗体を調べるための試薬が、もうなくなったのだそうです。当院の使っている検査センターは今週いっぱいで(つまり明日で)検査依頼をストップすると、今日連絡が入りました。他も同様で、すでに中止しているところもあります。

 正直に言って、お手上げです。麻疹ワクチンがなく、抗体検査もできない。麻疹・風疹混合ワクチンは相当量が作られているのは幸いなことですが。

 今週は「成人は先に検査を」とお願いしていましたが、来週は「成人も検査は省略し、希望者はすぐに予防接種。それも、麻疹ワクチンがなくなれば、麻疹・風疹ワクチンを」とお話ししなくてはいけません。厚生行政の怠慢のツケが、こんなところにもまわってきました。

 もっとも、一番のツケは国民のところにきています。昨年度から麻疹・風疹ワクチンを2回法にしていますが、その時点で小学生以上の子どもたちや大人たちは「見捨てられた」のですから。

 それを一向に改めようとしない厚労省の姿勢には、怒りすら覚えます。

 私たちは、国民の健康や命をきちんと守ろうとしない政治家や役人たちを、もう「見捨てて」しまって良いのではないでしょうか。そんなふうにも思ってしまいました。

投稿者 tsukada : 2007年05月25日 23:13