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2007年03月26日

もう一つの落とし穴

 学校が春休みに入ってきたためか、今日の外来は多少は落ち着いてきました。それでもまだまだインフルエンザが多く発生していることに変わりありません。今週でピークを過ぎてくれることを願うばかりです。

 インフルエンザ診療の「落とし穴」について、昨日の「院長ブログ」に書きましたが、まだ他にも注意をしておかなければいけないことがあります。タミフルの副作用報告についてです。

 医薬品の使用によって、健康上の不都合な現象が生じた場合には「有害事象」としてメーカーに報告することになっています。それらの中には、医薬品が副作用として関係しているものもあれば、必ずしもそうではない場合があります。副作用として何が問題なのか、その医薬品を使用するにあたってどんなことに注意をしていく必要があるか、などは、その後のデータの集積やその解析によってなされていきます。

 タミフルの場合には、インフルエンザそのものが精神神経症状を出しやすいために、その分析はそうとう困難です。そして、マスコミ報道などが大々的にされたため、多数の「副作用情報」が寄せられることになります。もはや、その数だけで「タミフルの副作用がこれだけ多く発生している」とはいえない状況になってしまいます。

 タミフルなどの抗インフルエンザ薬が、インフルエンザの経過をそうとう軽症化しているのは確かです。とても有用性の高い医薬品です。もし完全に使うことができなくなってしまったら、それもまた困った状況といわざるをえません。

 実際に10歳代のインフルエンザ患者の治療をどうするればいいのか、現場の小児科医は困惑しています。代わりに使用できるリレンザ(吸入薬)は、すでに品薄です。メーカーにも問屋にも、在庫はないようです。使いたくても使える薬がないとなると、対症療法でいくしかありません。

 今回の騒動から、「タミフルは怖い薬」「使ってはいけない薬」というイメージが作られてしまいました。でも、そのために必要な薬を必要な人に使うことができなくなるとしたら、それもまた大いに問題です。

 いささか「場外乱闘」気味になってしまったタミフル騒動ですが、医学的な検討をきちんと行うことができるように、冷静に見守っていただきたいと思っています。そうしないと、もっと大きな「落とし穴」に陥ってしまうかもしれません。

 新型インフルエンザの世界的な流行も、もしかしたら目前にせまっています。その時に、タミフルは重要な治療薬であり、予防薬であるのですから。

投稿者 tsukada : 2007年03月26日 23:03