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2007年02月20日

悩める診断

 インフルエンザの流行が日増しに拡大しています。

 例年より遅れて2月上旬、流行期に入りました。当地でも全国的な傾向とだいたい同じような振る舞い方をしています。今月下旬がおそらく峠になるだろうとのこと。今週と来週が要注意です。気をつけてお過ごし下さい。

 その場ですぐ判定のできるインフルエンザ検査キットが使えるようになって10年ほど。外来で使えるようになってから、タミフルなどの治療薬とならんで、インフルエンザ診療が飛躍的に進歩しました。

 以前は症状や流行の様子といった「状況証拠」でインフルエンザの診断をしていましたが、この検査キットを使うと「物的証拠」が得られます。患者さんの役に立つのはもちろん、私たちの診療上のストレスもずいぶんと軽減されました。

 A型とB型に分けて判定できるキットが主に使われています。「A香港型」と「Aソ連型」は区別できませんが、A型とB型インフルエンザの違いだけを見ていても、地域内での流行の様子がある程度分かります。

 近隣の小学校でここ2週間ほどB型インフルエンザが流行中。この学校は流行の最初はA型も多少出たのですが、今はB型一色。クラスを変えながら、まだ流行が止まってきていません。そして、その周囲の保育園や中学校でもB型インフルエンザの流行が次第に始まりました。

 インフルエンザがある集団の中で蔓延し、その後、その周囲に進行していく様子が、診察室にいながら把握することができるのです。毎日、同じ地区の子どもたちを継続的に診療している開業医の、醍醐味なのかもしれません。

 一方で、検査キットの悩みもあります。病気の初期(発症から半日程度)は、まだウイルス量が少なくて、検査をしても分からないことがあります。あるいは、鼻の奥から粘膜や鼻汁を綿棒でとらせてもらうのですが、上手に採取できず、やはり検査上では「陰性」、つまりインフルエンザの反応なしとなることがあります。

 反応がないというだけで、インフルエンザではないと、否定することはできません。最終判断は、やはり患者さんの症状などを総合的に診ながら行うことになります。「検査は陰性だけれど、やはりインフルエンザと考えて治療しましょう」などとお話しすることもあるのですが、そうであれば何のための検査なのか、といった疑問も出てきます。

 インフルエンザについては、疑わしい場合には積極的にインフルエンザとみなして治療薬を使用するようにすることが、本人の治療のためにもなりますし、周囲への感染の機会を減らすことになります。その意味で、流行が大きくなってきた場合には、検査をせずに判断していくことも、また大切だと考えています。

 そうはいっても、検査が陰性の場合には、インフルエンザとすべきか、明日また見直すために再診してもらうか、など、頭を悩ますことが多いのは事実です。毎日こんなストレスを抱えているから、頭がまた薄くなる・・!?

投稿者 tsukada : 2007年02月20日 23:59