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2006年11月27日

狂犬病の予防接種

 このところ、当院でも狂犬病の予防注射をときどきしています。もちろん獣医院ではありませんので、犬に対しておこなっているわけではありません。接種を希望される方に注射をしています。

 当院で初めて狂犬病予防接種をしたのは今から10年ほど前になります。中近東の国へ派遣される教師のご一家だったと思います。破傷風などのワクチンといっしょに狂犬病についても予防接種をしておきたいと言われた時には、私もえ!?っと驚きました。それって、犬にするのでは、と。

 メーカーに問い合わせて、人のためのワクチンが用意されていることを知りました。日本では犬に対して狂犬病の予防接種を徹底したために、国内での発生はまずありません。そのために、私たちは安全に暮らせるようになっていますが、海外では、そうではない国がまだ多いことも知りました。

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 この世界地図を見ても、狂犬病の発生数の多い国が、実は世界の大半だという、怖い事実がよく分かります。日本は、狂犬病についても実に“平和”な国なんですね。でも“戦場”のような国が多いことを、忘れてはいけないようです。

 昨年のことだったと思いますが、子犬の輸入が厳しく制限されました。狂犬病がまだ多く発生してる国からは、生後半年までの子犬は輸入させないという処置です。これくらいにならないと、その犬が狂犬病になっていないかどうか、検疫をすることが難しいということが、その理由だそうです。

 そして、その対象国に中国やアメリカが入っていたのにもビックリしました。東南アジアや中近東の国々だけだと思っていましたが、こういった国も、狂犬病についてはまだ“発展途上国”なんですね。

 ここ数週間で、日本でも狂犬病で亡くなる方が数人でています。それらの方は、みな海外で犬に噛まれ、帰国したあと発症しています。狂犬病は伝染する病気ではありません。日本の国内での事故ではないことが、私たちにはまだ救いです。

 世界ではまだまだ発生数が多い感染症です。インドでは年間に数万人の死亡があるのだとか。当面は海外に出かけるときには、ぜひ狂犬病の予防注射を受けていくことをお奨めします。そして、放し飼いになっている犬も多いようですので、犬に近づかないように気をつけていてください。

 もしかしたら、いずれ日本の中にいても危険になるかもしれません。ペットとして飼われている犬の何分の一かは狂犬病の予防接種を受けていないのだそうです。野犬化している犬も、少なくありません。海外から不正に輸入されている犬もいるようです。もしも日本でまた狂犬病のウイルスをもった犬が増えていったら・・その時には人間がワクチン接種を受ける必要があるかもしれません。そんな時がこないことを願っていますが。

投稿者 tsukada : 2006年11月27日 22:23