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2006年09月29日

新首相誕生

 総理大臣が替わりました。元小泉首相の思惑通り、安部氏が新しい首相になりました。「小泉劇場」と揶揄された政治手法ですが、次の首相も自分でちゃんとお膳立てしていったわけで、すごい手腕です。

 そして今日は安部・新首相が初めての所信表明演説を国会で行いました。ニュースで少し聞いただけですが、あまり印象に残らない内容でした。というより、ちゃんとまじめに全部聞こうという気持ちになれなませんでした。首相としての印象も、あまり濃くはないようです(毒がない分だけいいのかもしれませんが)。

 英語を多用するのが好きのようですね。新しい政策として「イノベーション25」を提唱しています。ぱっと見て(聞いて)何のことかすぐに分かる人は、どれくらいいるでしょうか。私は分かりませんでした。調べたら「技術革新」とあります。だったら、素直に「技術革新立国」とか言えばいいじゃないかと思うのですが。

 「イノベーション」という外来語を知らない人の方が多いことでしょう(私だけではないですよね・・)。それを知りながら、国民に伝わらない言葉をどうして選んでしまうのか、疑問です。誰かがいつもわきにいて、彼の言葉を伝達したり、翻訳することに慣れているのでしょうね。さすば「政界のサラブレッド」。「二世議員」いや「三世議員」だけあります。そのスジの中で純粋培養されてきたのでしょう。

 ネットでこの言葉を検索したら、国立国語研究所のHPにたどり着きました。ここでは分かりにくい外来語を日本語に置き換える提案をしています。その一つに「イノベーション」があり、「技術革新」に言い換えるべきだと。「数十年前から用いられている外来語で,省庁の白書にも多用されているが,一般の理解度は低い段階にとどまっており,言い換えや説明付与の必要性は高い。」ともあります。

 この提案に法的な縛りはありません。でも、公的な組織が行った公的な提案です。その組織の、最終的な責任者である首相が、それを完全に無視してしまうのは、いかがなものでしょう。

 日本に誇りを持てというのが彼の持論のようです。その内容は吟味する必要がありますが、それ自体は間違ったことではありません。でも、ほとんどの日本人に伝わらないような外来語をポンポンと使って平気でいられるその気持ちはどうなんでしょう。一国の首相が、自分の国の言葉を大切にしない様子を見ると、悲しくなります。

 「イノベーション」のあとに続く「25」も問題。てっきり「25年計画」という意味かと思ったのですが、そうではなく、「2025年までの目標」なのだそうです。何でここで2025年が出てくるのか、意味不明。これからの日本の姿を、やや長い目線で見ていこうということなのでしょうが、それがどうして、今から19年後なのか。何かこの年にいいことがあるの? オリンピックが日本で行われるわけでもないですよね。

 それほどキリのいい数字の年でもなさそうです。まさか安部首相が今から19年間、首相であり続ける意志をしめしているわけでもないでしょう。

 今から19年前と言えば1987年(昭和62年)。私は30歳で、末娘が生まれる前の年、開業する3年前でまだ勤務医。そのころの時代は確かバブル景気が最高に盛り上がっていた頃・・。ずいぶんと「昔」のことに思えますね。過去の19年間ですらそうですから、これから将来の19年間はもっと早いスピードで、劇的に変化していくことでしょう。それをただ「イノベーション25」などという、分かったような言葉で一括りにしてしまうのは、実に危うい。

 19年後のことを夢として語るのは自由ですが、首相としてまずは今の日本をどうしていくのか、もっと緻密に、もっと丁寧に語って欲しいものです。もっともそれができないから、言葉だけのスローガンを掲げてしまうのかもしれませんが。

 苦言ついでにもう一つ。どうして西暦を使うのでしょう。別に私は国粋主義者ではないですし、どちらでもかまわないのですが、公的なものでは往々にして和暦での表記が求められます。病医院で使うカルテの日付もそうですし、診療報酬の請求もそうです。首相が西暦でもぜんぜんかまわないというのであれば、さっそく省令を改正して、どちらでも良いようにしてほしいものです。こんなところも、どうもちぐはぐな感じが否めません。

 ともあれ、新しい首相が誕生し、新しい日本の政治が始まろうとしています。それが少しでも日本のために、そして日本人のために良いものであることを期待しています。

投稿者 tsukada : 2006年09月29日 23:03