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2006年06月20日

子育てについて考えています

 一冊の本を読み終えたところです。『平気で他人(ひと)の心を踏みにじる人々』というタイトルで、副題に「反社会性人格障害とは何か」と書かれています。

 この「反社会性人格障害(パーソナリティー障害)」の代表例として、先日逮捕されたホリエモンこと堀江貴文容疑者が最初に取り上げられています。その分析を読みながら、堀江容疑者の内面が少しずつ明らかになり、「反社会性人格障害」についても理解できるように書かれています。そして、日本で起きた最近の重大事件についても言及されていますが、反社会性人格障害がとてもつもなく重大な問題であることが、漠然と分かってきました。

 「人格障害(パーソナリティー障害)」について、最近関心をもっています。先日この「院長ブログ」でも、境界性人格障害(ボーダーライン・パーソナリティー障害)に触れたこともありました。人格障害の中の分類も、その一つひとつの定義などもまだよく理解できてはいないのですが、でも、欧米で大きな社会問題となっているこれらの「人格障害」が、日本でもこれから急速に注目を浴びてくるのではないかと思っています。

 それは多少根拠があります。各種の人格障害は、元々の偏った性格に起因する部分もあるようですが、それぞれの個人のパーソナリティーやアイデンティティーの形成途中での歪みや不適切さが重要な要因になっているようです。幼少期から両親の適切な愛情を受けずに育ち、思春期に自己をきちんと確立できてこないことが、その後の人格障害をおこしているということです。そして日本という社会が、子育ての環境においても、思春期の育ちにおいても、必ずしも良好だとはいえない状況にあります。いや、もしかしたら欧米以上にこういった問題を大きくしてしまうような“劣悪”な状態なのかもしれません。

 男尊女卑や家父長的な体質は、日本の悪しき“伝統”だと思っていますが、こういった封建的な遺産がまだ色濃く残っています。家や集団を優先させ、個人を大切にする考えは、まだ未熟です。結果として、子育ての中で必ずしも父母の適切な愛情が受けられず、自分を信じることができない人格が育ってしまうことになります。思春期の自己の確立も中途半端になってしまいます。

 こういった「内面の豊かな発達」がなく大人になっていく日本人は、欧米の人たち以上に、パーソナリティーの危機を迎える可能性があるのでは・・。そんなふうに思うと、まだ日本ではあまり取り上げられていない「人格障害」について、もっと知る必要があるように思います。そして、陥りやすい問題を少しでも解決するために、できることから始めていく必要があります。

 小児科医としてお話をするとしたら、やはり幼少期の子育てを大切にしてほしいと切に願います。父母のあふれるような愛があって、初めて子どもは豊かに育っていきます。そのための苦労を惜しまないでほしい。「あなたの子どもを犯罪者にしないために」などというショッキングな言い方をしている本もありますが、本当にそう思います。

※『平気で他人(ひと)の心を踏みにじる人々』:矢幡 洋著、春秋社、2006年5月刊、2,100円

投稿者 tsukada : 2006年06月20日 23:35