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2006年06月10日

そもそも防火シャッターとは

 防火シャッターが引き起こした事故について、昨日の「院長ブログ」に思うところを書きました。そして、書きながらぼんやり疑問に思うことがあり、今日一日考えていたのですが、そのことについて続けて書いていきたいと思います。

 そもそも防火シャッターとは何なのか、という疑問です。火災が起きたときに類焼や延焼を免れるため、建物の空間を完全に仕切る物・・そう考えていいと思います。そのためには、火災報知器などを連動して、自動で閉まる構造が必要ですし、昨日「緊急提案」したような、完全に閉まりきらない構造では、その目的を完全に達成できないことになります。

 そんなことは当たり前で、どこが疑問なのだと言われそうですね。問題はここからなのです。無人の建物で火災が起きたのであれば、早く火災を沈めたり、火災を小規模な範囲に閉じこめておくために、防火シャッターや防火扉が自動で、できるだけ早く閉まる仕組みは必要ですし、スプリンクラーなどの自動消火設備とともに活躍することでしょう。でも、無人ではないときに火災が起きたときには、そこにいる人たちの避難誘導はどうなるのでしょう。

 防火扉は、その一部に容易に出入りできるような“内扉”があります。そこを通れば逃げて行くこともできるでしょう(年齢の小さい子どもたちが、非常時に自分だけでそれができるかどうかは分かりませんが)。でも、防火シャッターは一度閉まれば、まず開けることはできません。

 先日の事故では降りてくる途中の防火シャッターに引っかかってしまったために起きた事故です。そうならないように安全装置をつけた新しいシャッターに、一日も早く交換しなさい、というのが昨日の「院長ブログ」でお話しした内容です。かりにこの新しい防火シャッターになっていたとしても、そして誤作動は起こさなくても、本物の火災時には短時間に閉まってしまいます。もしその時に、そこに子どもたちがいたらどうなるのでしょう。

 やはり先日の事件では、挟まった子どもを助け出そうとして教師たちが持ち上げようとしたけれどできず、保守点検をしていた業者の人がかけつけ、手動でシャッターをあげ、救出したということです。大人の力でも持ち上げることはできませんでした。完全にしまっていればなおのこと。そして、子どもが閉じこめられてしまえば、その子どもが開けることもできず、訓練されていない教師では助け出すことはまず不可能だということです。

 これは何を意味しているのでしょう。火災発生時に「防火」のために作動するのはあくまでも建物の防火であり、そこにいる子どもたちを守ったり助け出す物ではないということです。もし閉じこめられたとき、火災の起きている場所とは違うところであれば、あとで消防隊などによって助け出されることがあるかもしれません(挟まれなかったけれど、でも閉じこめられてしまった子どもたちはきっとパニックをおこしているでしょう)。しかし、もしも火災がそちらの方向であれば、最悪の事態も考えなくてはいけません。

 当院では先月、消防署の方からご指導いただいて避難訓練を行いました。そのときに、いかに逃げ遅れた子どもがいないかを確実に確認することが大切であるか、と教えられました。職員が避難誘導しながら、トイレも個室なども含めて、院内の全ての場所を一つひとつ点検し、声をかけ、目で見て残されている子どもがいないかどうかを確認しなくてはいけないと。そう考えると、火災時に自動的にしまってしまい、容易に開けることができない防火シャッターという物は、人の避難誘導にとって障害になるものだということになります。

 学校で万一に火災が発生した場合、教師が子どもたちを安全に避難誘導させなくてはいけません。全ての子どもたちが校舎に残ることなく、完全に避難できたことを確認したのちでなければ、この防火シャッターを完全に閉め切ってはいけないのではないでしょうか。昨日も提案したように、下から数十センチほどのところでいったん止まる構造になっていて、それ以上完全にしめるのは、避難が完了したと確認したあと、人の手によって行われなくてはいけません。

 防火シャッターは建物を火災から守るものです。直接的に人間を守るものではありません。それどころか、先日の事故のように子どもが挟まってしまう事故も頻発しています。そして何よりも問題なのは、避難路を遮断してしまうために、人的な被害を発生させうる装置でもあります。そもそもがそういった物なのだという認識は、おそらく誰にも、どこにもなかったのではないでしょうか。

 今回の防火シャッターによる事故の教訓として、ぜひ防火シャッターの危険性を回避する方法を考え出し、早急に実行してほしいと思っています。(私がこんなことを自分のブログに書いているだけでは、何も影響はないのでしょうね。誰かその筋の偉い人に“直訴”してくれませんか。ことは子どもの命がかかっています!!)

投稿者 tsukada : 2006年06月10日 21:04