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2006年06月08日

事故の背景

 高校生がエレベーターに挟まれて亡くなるという事故がありました。自宅のあるマンションで、帰宅寸前の出来事。きっとあと数十秒で我が家の玄関にたどりつけるくらいのところだったでしょう。家族の元に帰ってきたのは、冷たくなった亡骸(なきがら)でした。痛ましい限りです。

 このエレベーターを作ったシンドラー社については、いろいろと問題がありそうです。海外では第2位のシェアを誇る大企業にもかかわらず、類似の事故がこれまでにも多数起きているようです。そして、危機管理がどうもできていないように感じられます。

 エレベーターは高速で上下運動をする乗り物。正確に動くことや、万一の時の安全策がしっかりとしていることは当然必要なこと。安全であることは、何にもまして重要な要素です。自分たちは製造会社であり、事故の原因は保守点検をしている業者が悪いというような言い方は、無責任につきます。たとえそうだとしても、点検作業の方法を的確に指示できない製造会社は、やはり問題だといわざるをえません。

 事故は大きなものだけが起きるわけではありません。大きな事故のまわりには、小さなトラブルがたくさん起きています。それらを丁寧に解決していくことが、大きな事故を防ぐことになります。これまで世界中で起きてきた事故やトラブルが、どれくらい点検され、エレベーターの安全性が向上され、保守の方法が改善されたのでしょうか。「自社の技術には絶対の自信がある」と言い放ってしまう会社の姿勢は、逆に不安を覚えます。

 完璧なものというのは、人間が作る限りありません。だからといって不完全なままで良いということではなく、不完全なものを少しでも完全なものに近づけていくという不断の努力が必要になります。そしてそこで重要なのは、事実を謙虚に受け止める姿勢です。事実として事故がおき、命が失わています。その事実から出発しなければ、より安全で完全なものはできてきません。

 自分たちの技術を誇りに思うことはけっこうです。でも、ただ「自信がある」とするだけでは、盲目的な宗教と同じになってしまいませんか? 「事故がおきるはずがない」と思ってしまうところに、重大事故に結びつく一番大きな要因が潜んでいるように思います。

 やはり、謙虚であれ。事実を丁寧に見つめよ。誰か、シンドラー社の人にそう伝えてあげて下さい。

投稿者 tsukada : 2006年06月08日 23:45