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2006年06月01日

何のための取り締まり?

 今日から6月。当院にとっては開院と、併設しているわたぼうし病児保育室の開設の記念になる月です。そんな月なので、ちょっと昔のことも思い起こしながら、でも感傷的になるのではなく、この先を見通しながら進んでいきたいと思っています。

 今日から路上駐車の取り締まり方法が変わるという話が、ニュースをにぎわしています。これまでは一定の時間がたたないと駐車違反としての処理が行われませんでしたが、これからは運転手が自動車から離れたら、その場で駐車違反になるのだとか。運送業者など、仕事で自動車を使っている人たちにとっては大変な問題になっています。

 確かに違法駐車や迷惑駐車に困っている事実はあります。何とか対策をとらないといけないでしょうが、杓子定規に法の規定通りにするだけで解決するのか、疑問です。取り締まりを強化し、完璧に運用すれば、限りなく駐車違反はなくなるかもしれませんが、でも、それでいいのでしょうか。商売をしている人たちも商品の納入などに支障が出ることでしょう。取り締まりの厳しいところでは、営業ができないことになってしまうかもしれません。

 生活している人たちにとっても、けっこう大変な問題を抱えてきそうです。私の父は車イス生活をしていて、自動車の乗り降りの時には介助が必要ですが、運転手が運転席から離れられないとなれば、他の介助者が必要になります。リハビリやショートステーに通っていますが、その送迎バスの運行も、困難になるかもしれません。

 私自身のことを考えても、市街地での買い物で短時間“違法駐車”していることがありましたが、それも全くできない(しない)ことになれば、もう駐車場のない市街地では買い物できないことになります。郊外の大きなショッピングセンターに向かうことが多くなるでしょう。きっと他の方々も同じだと思います。そうなれば、ますます市街地の空洞化、そしてドーナッツ現象が進行してしまうかもしれません。

 今回の事態は「取り締まりの厳格化」に端を発していますが、日本の交通のあり方、車社会の中での都市の機能やそのあり方、あるいは私たちの生活のあり方そのものをどうしていくか、といった一番肝心なところを議論しないし、見通すこともしないという点に、一番大きな問題があるのだと思います。

 形さえ作ればそれでいいわけではありません。大切なのは中身です。取り締まりのための取り締まりではないはずです。駐車違反を完全に取り締まることができたけれど、そこはゴーストタウンになっていた・・そんな“近未来小説”に出てきそうなストーリーが現実にならないとは限りません。

 ぜひ、何のために駐車禁止を取り締まるのか、どんな社会にしたいのか、といった内容のある議論を積み重ねていってほしいと思います。

投稿者 tsukada : 2006年06月01日 23:21