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2006年05月18日

小児科がなくなっていく

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 先日の新聞記事です。当院のすぐ近くにある病院の小児科が今月いっぱいで休止します。数年前に常勤小児科医が不在になり、小児病棟はすでにありません。かろうじて週2回の外来のみを大学からの出張でおこなっていただけでしたので、実質的にはあまり活動している状態ではありませんでした。そんな事情なので、今月いっぱいでその外来がなくなるとなっても、それほど影響はないように考えていました。でも、こういった形で記事になると、やっぱり大変なことがおきているのだと実感されます。

 背景には小児科医の不足があります。そして、それに輪をかけたのが臨床研修制度の実施です。2年前から始まったこの制度では、医学部を卒業したあとの2年間に多くの科を回って研修することが義務になりました。これまではストレートに各科(内科とか小児科とか産婦人科とか・・)に入ってすぐに専門研修を受けることもできたのですが、それでは医師としての技術に問題があるということから、ローテーション方式の研修制度ができました。

 一見するとより技術のしっかりした医師が育ち、日本の医療は良い方向に進むと考えられます。長い目で見ればそうでしょう。でも短期的には恐ろしい事態が日本中でおきています。それは地方の病院に出張している医師が大学に戻ってしまい、病院の医師不足が助長されたことです。

 医師になっても専門科に入るのは2年間はなし。ここに「空白の2年間」が生じたことがその理由の一つ。もう一つは、研修医を教育するためのスタッフがこれまで以上に必要になり、出張先から医師を引き上げたことです。この問題は小児科だけではなく全ての科で生じていて、さらに地方の中小病院ほどその影響が多いようです。

 くだんの病院では同じく今月いっぱいで産婦人科の常勤医がいなくなります。来月からは週1回だけ外来診療をするとのことで、「産婦人科」の看板だけはかろうじて維持するようですが、でもお産はできませんし、入院病棟は閉鎖です。実質的には休止といっていいでしょう。これも、小児科と同じく「医師不足」が問題の根っこにあります。

 少子化問題が逼迫している日本で、「小児科問題」や「産婦人科問題」がますます解決困難な状況に陥っています。お互いが悪い方に作用し、泥沼に足をとられてしまっているかのような様相です。どこかに解決の糸口・・せめて脱出口はないのでしょうか?

投稿者 tsukada : 2006年05月18日 15:51

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