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2006年05月16日

麻疹が集団発生

 またもや麻疹(はしか)の集団発生が問題になっています。ニュースでは茨城や千葉で集団発生があり、合計で100人以上の患者がでているとのこと。専門機関は今後流行が拡大することも懸念されるとして、注意を呼びかけています。

 麻疹はもう過去の病気かと思っている方も多いかもしれません。でも、こうして各地で集団発生があると、けっして侮ることはできません。いつ私たちの周りで患者が発生し、流行してくるかもしれないのです。それは、日本人がこれまで予防接種を軽視してきたため、十分な免疫をもっていない子どもたちや大人たちが大勢いるからです。

 麻疹の予防は何と言ってもワクチン接種。1歳になったらできるだけ早く受けてもらうようにお願いしていますが、残念ながら100%ではありません。以前はとくに都市部での接種率が低く、50%とか60%どまりだったようです。ここ数年のとりくみでそうとうアップしてきてはいるようですし、患者発生数もそれに反比例してずいぶんと少なくなってきたと報告されています(以前は日本で年間数万人の患者数があったのですが、昨年は千人ほどとのこと。でも、アメリカはわずか数十人ですから、完全な制圧にはさらに努力を重ねる必要があります)。

 麻疹患者は主に幼児の中ででますので、現在の「1歳になったらすぐワクチンを」政策で一定の効果はあります。しかし、残念ながら麻疹ワクチンの効果は数年で弱くなってきますので、小学生以上になると、一度ワクチン接種を受けているのに免疫が十分ではなく、麻疹にかかってしまうこともあります。あるいは、まだワクチン接種を受けていないでそのままになっている子どもたち、そして免疫をもたない大人たちもそうとういることでしょう。その人たちを麻疹から守る対策は、手つかずですっぽり抜け落ちています。国はいつまで無策でいるのでしょう。

 いや、今年度から小学校に入る前の年(いわゆる“年長さん”)でもう一度麻疹ワクチンを接種することになったはず・・と指摘される方もおられるかもしれません。確かに国は政策を変更し、今年度から麻疹・風疹を混合ワクチンにし、さらに2回接種するようにしました。しかし、実はそこに重大なミスが隠されていました。年長さんで受ける2期の接種は、1期に混合ワクチンを受けた子どもに限ると制限をしてのです。「絵に描いた餅」とはこのことでしょう。年長さんになってもう一度麻疹ワクチンを接種できるのは、あと4年ほどの間は皆無なのです。

 それはあんまりだと批判を受け、厚生労働省は「2年たったらこの制限をなくす」と小児科医に約束しました。名目は副作用の有無の確認だそうです。当初、小児科医の要望がきちんと取り入れられたと思ったら、「制限条項」を見て愕然としたので、この処置は一応歓迎すべきものとされました。それでも、まだ2年間は待たなくてはいけない・・

 そう思っていたところに「麻疹集団発生」のニュースです。一日も早く、年長児への麻疹接種を強力に推し進める以外に、子どもたちを積極的に麻疹から守る方法はありません。

 そして、そんな“外野”の騒ぎが霞ヶ関に聞こえたのか、ブーイングを受けている「制限条項」を今月末で廃止するという方針が出てきました(同時に、麻疹と風疹の予防接種を混合ワクチンだけに限ったものを、もう一度それぞれの単独ワクチンも使えるようにします)。現在パブリックコメント募集中ということで、政府のHPで意見を求めています。20日が締めきりで、おそらく来週中、おそくても今月中には新しい通達・通知が出されるものと思います。

 6月から年長さんへの麻疹ワクチンが始まったら、できるだけ早く受けるようにおすすめします。それ以上の年齢の子どもたちは、残念ながら法に基づく接種ができませんので、任意接種で受けておくことを強くお願いします。お金は数千円かかりますが、もしかかったら時に命も心配になる大病だということを考えると、やはり受けておく価値は十分にあります。

 この情報は、まだ十分に知られていないようです。きちんと決まりましたら、またお知らせしていきますね。

投稿者 tsukada : 2006年05月16日 23:08

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