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2006年05月09日

ソメイヨシノはお年寄り

 日本人の「一斉行動」好きなのは、いろんな場面で見られます。学校では団体行動をとれるかどうかが評価の大きな対象になっています。私のような“へそ曲がり”は先生や生徒仲間から疎まれてしますことがたびたび。体育の授業が嫌いだったのは、運動音痴だったこと以上に、みんなと同じことができないことが多く、さらにみんなと違うということだけでマイナスの評価が与えられることに不信感を持っていたからでもありました(←こんな屁理屈をつけるところが、とくに教師からは嫌われるのでしょうね)。

 みんなと同じように行動し、先生が要求する通りに答えを出したり、考えたりするのは、教育の本質ではないように思います。団体行動、一斉行動はある程度必要かもしれませんが、それが最重要視されていると、一人一人の子どもたちが“死んで”いきます。物事を深く考えることはしなくなるでしょう。目に見える事象の背後にあるもの、より本質的なものを見抜く力も育ちません。そんな子どもたちが大人になって次の社会を作っても、これまでの日本社会とはさほど変わっていかないのではないかと危惧しています。

 日本人にソメイヨシノが好まれるのは、同じような事情があるのかもしれません。ソメイヨシノという桜の品種は、江戸時代に桜職人によって作られました。交配して子孫を作る能力がないため、枝を切って挿し木をし、新しい株を作ります。今日本中で育っているソメイヨシノは、江戸時代から生きていることになります。見かけは若くても、もう百数十歳になるのです。遺伝子には寿命がありますので、そろそろ老木になってきているようです。ソメイヨシノを新しく植えても数十年しかもたないのは、これが理由です。(クローン技術で新しい生命を作っても、その遺伝子は生まれながらにしてもう何年、何十年の歳をとったものであり、奇形や病気がおきやすいのもうなずけます。それなのにいまだクローン技術がもてはやされるのは、困ったことです。)

 日本中のソメイヨシノが全て同じ遺伝子だということが、ある気象条件を満たすと地域で一斉に咲き出し、一斉に散ってしまう理由です。交配で新しい株ができているのであれば、少しずつ遺伝子情報が違っているために、開花する時期は多少ずれるはず。さすが“クローン桜”です。見事に一斉行動をしてくれます。

 そんなソメイヨシノをけなげに思うのか、日本人にはとても人気がありますが、でもいつまでもソメイヨシノ一色では、早晩(数十年以内)桜を楽しむことができなくなってしまいます。桜にもいろんな種類のものがあるのですから、他品種を上手に活かして公園作りをしていくべき時にきているのだと思います。

 「日本三大夜桜」の一つと呼ばれている高田城跡公園は、にぎやかだったのはソメイヨシノが満開だったほんの数日だけでした。1年365日の中のほんの1%か2%。瞬間最大風速はものすごいものがありましたが、それで終わり。今は訪れる人もなく、犬の散歩にでかけてもすれ違う人もほとんどいない状況です。

 いろんな種類の桜を植えることで、爆発的な人出はないかもしれませんが、長い期間にわたって楽しんでもらえる公園ができることでしょう。ソメイヨシノの寿命が近づいていることをちゃんと受け止めれば(このことを知らない人が多いようですが)、公園作りのコンセプトもきっと変わっていくでしょう。(そもそもコンセプトなどないのかもしれませんね。)

投稿者 tsukada : 2006年05月09日 23:34

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