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2005年11月04日

麻疹患者激減

 今日の読売新聞のトップ記事に「麻疹制圧へあと一歩」とあります。先進国で麻疹患者がほとんど出ていないのに、日本だけは毎年数万人の患者が発生していました。その大半は乳幼児であり、死亡数もそうとうにのぼっていました。そんな日本でも、ここ数年の取り組みで患者発生が激減。今年は今のところ500人台であり、このままいくと1,000人を割るのではないかという見通しなのだそうです。

 その対策とは、1歳で予防接種を徹底すること。できる限り1歳3か月まですませるようにし、1歳半の健診でもチェックを厳しくしました。以前は接種率の低かった都市部でも受けるようになり、その結果が患者数の大幅な減少につながったということです。

 当院でも積極的に取り組んできました。乳幼児健診の際におの赤ちゃごとの「ワクチンのスケジュール」をお示しし、さらにはしか予防接種はとても重要だと伝えてきました。すべての受診者の麻疹予防接種歴をお聞きし、カルテ表紙の最上段に「麻疹予防接種:未・済」のいずれかに○をつけることにしています(これは当院オリジナル!)。もし1歳3か月以降になっていてもワクチンが終わっていない方は、この欄の「未」を赤丸で囲んでスタッフの誰でもが把握できるようにします。そしてその子が発熱をし、麻疹も否定できないときには直ちに感染症として隔離扱いさせていただくことにしています。

 当院では2、3年に一度、麻疹患者が来院し、その周囲に二次感染させてしまうというトラブルがありました。しかし、こういった取り組みを本格的に行ってからは患者発生はゼロです。対策の効果はしっかりとあるようです。

 はしか(麻疹)はとても重い病気。ときには死亡することもあります。昔から「はしかは命定め」と呼ばれたくらいで、はしかにかかったのに命拾いをしたら、それだけ生きる力が強いのだとされていました(逆に亡くなってしまうのは、その子の生命力が弱く、運命だったと思ってあきらめようという考え方です)。そんな感染症ですが、ワクチン接種を受けておけばかからなくてすみます。そして多くの子どもたちがワクチンを受けてあれば、流行することもなくなります。欧米では幼児期に2回の接種を行うことにより、麻疹を「撲滅」寸前にまで追い込むことに成功しています。

 それなのに日本では何故? それはワクチンを嫌う風潮がいまだ残っているからです。「麻疹なんてたいした病気じゃない」「麻疹はもう流行していない」「ワクチンの副作用が怖い」「麻疹の免疫は、本物の病気をした方がしっかりできる」・・ そんないろんな“説”が、小児科医を名乗る人たちからまことしやかに流され、一般の人たちの間に広がっていました。

 ここ数年の取り組みで、こういった非科学的で、邪悪な考えは、多少なりとも陰をひそめてきたということでしょうか。日本人の「長いものには巻かれろ」的な考え方で、お上が言っているから従えとばかりに接種率がアップしたというのであれば、それはそれで問題をはらんでいるようにも思います。子どもたちの健康や幸せのことを、一人一人の親御さんがしっかりと考え、その上で判断されたのだということを、信じていたいと思います。

 来年度からは日本でも麻疹ワクチンは幼児期に2回接種することになります。こういった対策が強力に行われることによって、日本から麻疹という感染症が根絶される日が一日でも早くやってくることを願っています。

投稿者 tsukada : 2005年11月04日 23:50

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