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2005年07月13日

難聴予防のワクチン

今日はまじめな話です。
おたふくかぜ(流行性耳下腺炎)が、今問題になっています。

おたふくは一般には子どもにとっては軽い感染症と考えられています。
しかし、実際にはそうとう多くの、そして重大な合併症があります。
その1つが難聴です。

おたふくウイルスが、内耳の聴神経を壊し、永続的な聴力障害をもたらします。
通常は片側ですが、でもその耳は永久に音を感じることができません。
もし何らかの理由でもともと片側の難聴があれば、完全に無音の世界を生きて行かなくてはいけません。
あるいは、その時には片側が正常に残っても、その後は「片肺飛行」です。
危うさが続きます。
健常な耳にもしものことがおきたら・・

おたふく難聴は、以前から知られていました。
その頻度は、アメリカの有名な小児科教科書には「15,000人に1人」とありますが、実はもっと多いようだということが、最近言われてだしています。
ある医師向けの雑誌には、数百人に1人ほどはいるという指摘が載っています。
日本の全国調査では、2001年のおたふく難聴は650人。
この年のおたふく患者でわると、発生頻度は3,500人ほどに1人になります。
さらに、おたふくの症状がはっきりしていないけれど、大半がおたふくウイルスが関係しているとされている「突発性難聴」の発生が2,000人ほどいます。
これも含めると、日本では年間に数千人の規模でおたふく難聴が発生していることになります。
発生頻度は数百人に1人です。
これは大変な数字です。

おたふく難聴には治療法がありません。
いくつかの方法が試みられてはいますが、確実に効果のあがるものはないようです。
そして、聴力の回復は通常は見込めません。
一生、そちらの耳は音を聞くことができません。

おたふくというと、軽い感染症というイメージが強いだけに、もしも難聴になってしまったら、親御さんの思いは大変なものがあるでしょう。
「喪失感」「絶望感」・・
医師からおたふくの診断のときに難聴について聞いていないケースが大半ということです。
そして、あらかじめワクチン接種を受けておくだけで、おたふくにかかることも、そして難聴になることも予防できるということを知らされていた親御さんも、とても少ないようです。
ただ1回だけ予防接種を受けておくだけで、一生の問題をおこさなくてすんだのに。
そんな思いになってしまう方も、多いことでしょう。

おたふくワクチンは、日本では任意接種です。
法律に基づいて市町村で行われる予防接種にはなっていません。
希望者だけに行いますし、有料です。
残念ながら、実際に受けられるお子さんはまだまだ少ないです。

欧米では、すべての子どもたちがおたふくワクチンを受けています。
麻疹、風疹、おたふくの三種類を1つにしたワクチン(MMR3種混合ワクチン)を使っていますし、それを2回受けるのが普通です。
そのためにおたふくそのものの発生数が、極端に少なくなってきました。
アメリカでは2003年のおたふく患者は、わずか231人です。
ほとんど「絶滅寸前」にまで追い込むことができています。
当然のことながら、おたふく難聴の発生も限りなくゼロに近いことでしょう。

日本の子どもたちは、残念ながらおたふく難聴になる危険から十分に守られてはいません。
国の方針も早く転換しなくてはいけませんが、なかなか改善されないのはいつものこと。
今できることは、任意接種でお金はかかりますが、一人でも多くの子どもたちにおたふくワクチンを受けてもらうようにすることです。

おたふくワクチンは、子どもたちの難聴を予防するワクチンです!
お子さんに、おたふくワクチンをぜひ受けさせて下さい。
そして、周りにいる親御さんたちに、この知識を広めていってほしいと思います。

投稿者 tsukada : 2005年07月13日 11:51

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コメント

親として子供のために出来ることはしてやりたいと思い、我が家の二人の子供たちもおたふく風邪の予防接種を受けました。上の子は熱性けいれんを二回もしているのでリスクを考えて接種しました。下の子はけいれんなどは無いのですが予防できるのであればと思い接種しました。水疱瘡は下の子が一歳四ヶ月のとき残念ながらかかってしまいましたが、上の子は予防接種のおかげで顔と頭に2~3個赤いぷつぷつができただけでした。保育園も休まず通園できました。
水疱瘡やおたふく風邪の予防接種なんて必要ないという人が多いのも実状ですよね。私の友人で看護士の人でさえそう言っていました。本当に残念です。
もっと接種する人が増えるように、私も周りの人に働き掛けて行きたいと思います。

260000件ヒット、私でした。ばんざーい\(^o^)/

投稿者 高田美恵子 : 2005年07月13日 14:08

26万件ヒットの栄誉(!?)獲得、おめでとうございました。
また、貴重なコメントもありがとうございました。
これからもどうぞよろしくお願いします。

ワクチン接種については、日本人の考え方はまだ甘いですね。
流行はしなくなってきているものが多いですが、それが予防接種のためであることもよくあります。
患者が少なくなったからもう必要ない・・なんて、簡単に思わないでほしいものです。

お子さんにきちんとワクチン接種を受けさせたいることを、嬉しく思います。
子どもをいろんな病気から守るための大切な方策です。
周りの方々にも、どうぞお伝え下さい。

投稿者 Dr.ジロー : 2005年07月13日 21:29

かなり前の記事へのコメントで申し訳ありません。
今日、長女がおたふくの合併症の難聴だと診断されました。
たまらない気持ちでネットを検索していて、こちらの記事にたどり着きました。

数年前にかかりつけの小児科で予防接種について相談した際に、「誰もがかかる病気だし、後遺症も無いわけではないので接種をする人は少ないがそれでもするのか?」と問われ、接種を断念した経緯があります。
あの時、判断したのは私です。
接種を受けていればよかった…もっと、おたふく難聴について勉強していればよかった…
後悔に胸をかきむしられそうです。

いまさら後悔しても、どうしようもありません。
耳鼻科の先生から、就職にも影響がでると聞きました。娘の将来を奪ってしまったのは、彼女を誰よりも大切に思っていたはずの私なのです……。

やりきれない思いでいっぱいです。
どうか、これ以上、私たちのように不幸な選択を悔やむ親子がありませんように…もっとおたふくの怖さについて子育て中の方に知ってほしい…本当に、切に切に祈っています。

投稿者 のぞみ : 2006年02月14日 00:05

自分はおたふく(ムンプス)難聴の6歳児の父親です。子供は昨年9月27日に失聴しております。掲示板に書かれていること同じ思いをしましたので胸が痛みます。
従来は数万人に一人と言われてきましたムンプス難聴ですが以外に多いようです。色々自分も調べたりしましたが予後のことが本当に気になりますね。同じような方がマユさんのムンプス難聴のお部屋
http://www.geocities.jp/munpusu_nantyou/top.html
に集まってきています。自分も一生懸命調べましたが日本ではムンプス難聴を疾患された方が集まっている唯一のところだと思います。ムンプス難聴のお部屋をもう少し充実させようとしております。自分はそのお手伝いをしておりますが、こちらのムンプス難聴のお部屋のBBSにお立ち寄りいただけたらと思います。

投稿者 静岡より : 2006年02月17日 21:43